D.ショスタコーヴィチ 交響曲第7番 ハ長調 <レニングラード>

指揮ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー
演奏ソヴィエト国立文化省交響楽団
カップリングショスタコーヴィチ 交響曲第1番 他
交響曲全集の一部
録音1984年
販売BMG(MELODIYA)
CD番号74321 72915 2


このCDを聴いた感想です。


 この曲は、一昔前にCMで一躍有名になったあのテーマばかりよく知られていますが、実はいろいろ聴き所の多い曲です。
 例えば、第1楽章のあの侵略のテーマが始まる前の序奏の部分は、とても明るく活気があり、同じ活気がある侵略のテーマの部分がどこか不安感を感じさせるような雰囲気があるのに較べて、こちらは侵略前の平和的で何も心配することがないような安心感に充ちた雰囲気があります。
 また、長大な第1楽章の後半は、戦争に見舞われた悲劇を表すかのような悲痛なメロディーが中心となり、侵略のテーマの部分とは大きく雰囲気が異なっています。
 第2楽章には、悲しいという点では共通しているものの、第1楽章の後半とはまた少し違った雰囲気があり、まるで感情を失ったかのような無常感があります。
 しかも、ここにはオーボエの長いソロがあるという点も、個人的には外せないところです(笑)
 これが、途中で3/8拍子になるところから、俄かに雰囲気が切迫し、感情をモロに出した叫ぶような音楽に変わってきます。
 特にここは、Es管のクラリネットのサイレンのような切り裂くような響きが上手く使われていて、敵の包囲網がどんどん迫ってくるかのような焦燥感が伝わって来ます。
 このあたりは、交響曲第5番の第2楽章に非常に雰囲気がよく似ています。
 Es管のクラリネットがソロでメロディーを吹いた後、急き立てられるような感じで金管(特にトランペット)が入ってくるところなんて、もうそっくりです。
 第3楽章は、冒頭のコラールがキーになっています。
 基本的に、このコラールと、ほとんどソロだけの静かなメロディーが交互に現れるのですが、ショスタコーヴィチ本人は、この第3楽章を『感動的なアダージョである。生命の歓喜と自然への感嘆。これが第3楽章の構想である』と解説しているそうです。
 しかし、わたしにとっては、自然への感嘆というより、この部分もエレジー(悲歌)に聞こえてなりません。
 静かなメロディー自体は、結構明るいのですが、この明るさが余計に悲しさを倍増させています。
 さらに、中間にスネアドラムの景気のいいリズムに乗った活発な動きもあるのですが、こっちはこっちで、交響曲第5番の終楽章のような『強制された歓喜』を髣髴させ、なんだか逆に、さらに暗い気分になってきます。
 わたしは、有名な『証言』を読んだことが無いのですが、この辺りを、どういう風に書いてあるかは、なかなか興味があるところです。
 第4楽章は、第3楽章の続きである暗い雰囲気で始まりますが、次第に盛り上がって行き、最後にレニングラードの解放を表すかのような、明るい華やかな響きで締め括られます。
 このクライマックスは、いかにもショスタコーヴィチらしいエネルギーに満ち溢れた熱い雰囲気があり、まるで勝利の叫びようにも感じられます。

 と、これだけ、いろいろな魅力のある曲なのですが、わたしがこの演奏で一番好きなのは、やはり、CMで有名な侵略のテーマの部分なのです。
 といっても、わたしが好きなのは侵略のテーマのメロディーそのものではありません。
 その背後で、ずっと一定のリズムを刻みつづけているスネアドラム(小太鼓)が好きなのです。
 このスネアドラムは、ダイナミクスが少しづつ大きくなっていくという変化はあるものの、リズムとしては『タカタカタン、タカタカタン、タカタカタンタカ、タカタカタンタカ』という、二小節が一単位の同じ音形を延々と繰り返しているだけです。
 まあ、この辺りが、『ラヴェルのボレロに似ている』と噂される所以でもあるのでしょうが……
 ロジェストヴェンスキーの演奏では、このスネアドラムの音色が最高なのです。
 硬すぎもせず柔らかすぎもしない、さらに、微妙に低い響きが加わることで、非常に深みがある音色になっているのです。
 ひどく月並みな言い方ですが、『この音色だけでご飯三杯はいけるぜ!』って感じです(笑)
 一方、メロディーとそれを取り巻く伴奏の方も面白いことになっています。
 メロディーは、極端に抑揚を付けて歌ったり、ブチブチとぶった切ったりと、あまりまともな歌い方に聞こえません。
 さらに、伴奏の方も、メロディーに見合ったバランスではなく、わざと歪んだ不適当なバランスで演奏されています。
 これは、最終的にレジスタンスのテーマが出てくるところで落ち着くところをみると、やはりロジェストヴェンスキーの方で、侵略者を揶揄する意図があったのだろうと思います。
 ただ、その侵略者が、必ずしもナチスドイツを指していたとは限らないでしょうが……

 演奏している、ソヴィエト国立文化省交響楽団については、プレーヤー一人一人の音に注目してみると、『これは凄い!』と思わせる音が随所に聞こえてきます。
 ところが、オーケストラ全体としては、『うん?』と首を捻りたくなるような部分も確かにあるのです。
 相変わらず、上手いような下手なような、何ともいえないオーケストラです。
 個人的には、このオーケストラは大好きなんですけどねぇ……(2002/3/22)