D.ショスタコーヴィチ 交響曲第5番 ニ短調

指揮アルトゥール・ロジンスキー
演奏ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団
カップリングショスタコーヴィチ 交響曲第1番
録音1954年10月2〜14日
発売MCA
CD番号MCD 80112


このCDを聴いた感想です。


 『なるほど、なっとく』

 今回のCDは、レコードでの発売当時から『伝説的名盤』として高い評価を受けていた演奏です。
 ところで、ロジンスキーのショスタコーヴィチの第5番に関しては、わたしは以前、42年録音のクリーブランド管との演奏について感想を書いています。
 その感想の中で、クリーブランド管との演奏に比べて、このロイヤル・フィルとの演奏は、迫力を感じないし、あまり好きではないと書いています。
 事実、最近までその印象は変っていませんでした。
 ところが、最近入手したCDを聴いて、イメージが一変しました。
 これまでは、このロイヤル・フィルとの演奏は、数年前MCAビクターから出ていた、「ウェストミンスンター指揮者シリーズ」の<アルトゥール・ロジンスキーの芸術>という国内盤のシリーズの中の一枚(MVCW-18008)で聴いていました。
 このCDで聞く演奏は、原音を忠実に再現したらしいのですが、潤いに乏しく、今ひとつパッとしないように感じられました。
 わたしも、そのCDで聞いていたときは、「そういう演奏なんだ」と半分あきらめていました。
 そんなある日、よく立ち寄るCDショップでこのCDを見つけたのです。
 実はこのCD,発売されたのは上記のCDよりも古く、中古ならともかく、新品では現在ほとんど出回っていません。輸入盤ということもありますし。
 以前、同じシリーズのベートーヴェンの第5番が音が良かった記憶があったため、物は試しと買ってみたのです。
 そして、家に帰って、聴いてみた瞬間……
 冒頭の言葉のような感想を浮かんできたという訳です。

 国内盤と異なり、響き等を後から付け加えたのかもしれませんが、音の拡がりが全く違っています。
 適度な残響がついているため、音に潤いが出て聞きやすくなっています。
 そして、最も大きいのは音の鮮明さです。
 クリアな音色になったことで、音楽の活きが良く、白熱度も3倍増といった勢いです。
 このCDを聞くと、これだったら当時の人が夢中になって聴いていたというのもよくわかります。
 そりゃもう、強烈なインパクトがあったことでしょう(笑)

 演奏のスタイルは、旧録音のクリーブランド管の演奏と基本的に一緒なのですが、録音が良い分、迫力は大幅にアップしています。
 このスタイルは、早い話が『麻薬中毒患者のような演奏』です。
 それも、覚○剤系の方で、どんどんハイになって行き、前へ前へひたすら加速していきます。
 ただ速くなって行くだけなら、快速な演奏とどう違うんだ、と思われる方もいらっしゃるでしょう。
 この演奏が、単なるテンポの速いだけの演奏で済まされないのは、異常なまでの勢いと迫力にあります。
 とにかく、前方に障害物が立ち塞がっても、全て跳ね飛ばして前に進んでいくような迫力があります。
 例え車にはねられても、何事も無かったように起き上がり、前と全く同じスピードで突っ走っていく……血をだらだら流しているのにもかかわらず…そんな勢いです。

 そして、それ以上に怖いのが…
 それだけキ○ガイじみた勢いのくせに、音楽が破綻していないのです(笑)
 普通、そういう限界を超えた演奏をしていると、アンサンブルが崩壊してくるものなのですが、この演奏では一糸乱れぬ……とまでは言いませんが、ちゃんとそろっており、完全に指揮者のコントロールの元にあることがわかります。
 その場での単なるノリではなく、実体は設計された勢いだったのです。
 それを考えると、ロジンスキーの統率力の凄さがよくわかります。
 ここまで狂ったような演奏を創り出すことができる指揮者は、そうはいないでしょう。

 まあ、ただロジンスキー本人も『奇人』という噂もありますので、案外半分は本気だったかのかもしれませんが(笑)(2001/2/23)


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