D.ショスタコーヴィチ 交響曲第10番 ホ短調

指揮クルト・ザンデルリング
演奏ベルリン交響楽団
録音1977年2月
発売BERLIN Classics(edel)
CD番号0090182BC


このCDを聴いた感想です。


 全体の演奏時間が一時間弱で全4楽章の曲のなのですが、演奏時間の半分近くを第1楽章が占めています。
 ということは、マーラーの「大地の歌」における「告別」と同様に全曲中で最も重要なのはおそらく第1楽章ということになるのでしょうが、わたしの印象に残ったのは、第1楽章ではなく、その次の第2楽章と第3楽章の二つでした。
 この第2楽章は、長大な第1楽章とは対照的に、演奏時間は4分半程度と非常に短い楽章です。
 曲を知っている方なら、この楽章を好きか嫌いかは別としても印象に残ったというのはだいたい納得していただけると思います。短い中にエネルギーを凝縮したような激しさがあり、ほとんど狂騒的といいたくなるような音楽です。交響曲第5番の第2楽章に近いのですが、それをさらに濃く圧縮したような感じです。明るいことは明るいのですが決して輝かしくはなく、むしろ何かに追われているような切迫した雰囲気で、派手なのに堂々としていなくてどこか浮き足立った緊張感がなかなかたまらない曲です。
 一方、第3楽章は、13分前後と第4楽章とほぼ同じ長さで、騒がしい第2楽章とは打って変わって沈んだ雰囲気の曲なのですが、わたしには、この第3楽章がちょうど第2楽章と対になっているように感じました。
 テンポの速さや明るさなどは全く正反対なのに、メロディーはなんとなく似ているように聞こえたため、よけいそう思ったのかもしれません。
 第2楽章が『昼』のスケルツォ、第3楽章が『夜』のスケルツォといったイメージで、明るく激しく焦燥感で追い詰められた第2楽章に対して、第3楽章はゆっくりとして暗いという不安感が漂い、種類は違えども両者とも負の感情という点でも共通しています。
 もっとも、負の感情は他の楽章にも多かれ少なかれあり、第1楽章もその長い曲の中でベースになっているのはどことなく憂鬱な気分で、第4楽章も、第2楽章ほどではありませんがやはり足が地に付かないところがどこかあります。
 また、第4楽章は、これも有名な話なのでしょうが、ゆっくりとした序奏+速いテンポの主部という形式なのに、序奏の部分が異常に長く、13分程度の楽章で序奏が5分近くもあるというかなり頭でっかちなバランスです。また序奏部の暗さに対してアレグロに入ってからはまるで別の曲のように能天気に明るいのですが、それだけ明るいにもかかわらず、どこか強迫的で、第2楽章ほどではないにしても何者かに急き立てられているような雰囲気があるところがいかにもショスタコーヴィチらしいと思います。

 ザンデルリングの演奏は、特に人目を引くような奇抜なパフォーマンスや、聴く者を圧倒するようなハイパワーなどはありませんが、それが全く気にならないくらい正攻法を突き詰めた演奏です。
 細部まで神経が行き届いて緊張感もあり、そして出るべきところではちゃんと出て、音のキレ、力強さ共に十分兼ね備えています。
 特にメロディーの歌い方は、憂鬱な雰囲気を上手く出していて、抑揚は結構強くつけていますが、歌おうという気持ちをあからさまに表には出さず、曲の雰囲気を大切にした歌い方です。(2005/4/2)


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