指揮 | シャルル・デュトワ |
独奏 | オルガン:ピーター・ハーフォード |
演奏 | モントリオール交響楽団 |
録音 | 1982年6月 |
カップリング | サン=サーンス 交響詩「死の舞踏」他 |
発売 | ポリドール(Decca) |
CD番号 | POCL-5032 |
この演奏の印象は、なんといってもハーフォードのオルガンの響きにつきます。 わたしも、それほど「オルガン付」の演奏を聴いた事があるわけではありませんが、この演奏ほど響きが真っ直ぐ上に伸びて行く演奏は今まで聴いた事がありません。 例えば、第2楽章の第2部冒頭で、突如オルガンが大音響の和音で入ってくる印象的な場面がありますが、他の演奏ではこの和音が、たいてい低音の安定性が悪く響きが濁ってしまっているのですが、ハーフォードは高音を主体にして澄んだ響きを作り上げています。 しかも高音を中心としているため、音がどんどん上に伸びていき、まるで響きが宙に浮いて、そのまま天まで昇っていくかのようにすら感じられます。 さらに音の入りのアタックを硬めにつけているため、高音主体でも存在がぼやける事が無く、輪郭がハッキリしていて確固たる存在感があります。 一方オーケストラの方は、デュトワらしい涼しげな澄んだ演奏です。 録音の具合もあるのでしょうが、響きを多めに残していて、フォルテの部分では結構厚めに響いているのですが、中味がギュウギュウに詰まって暑苦しいという雰囲気ではなく、風通しが良く、心地好さが感じられます。 ただ、響きが多めであるため、縦の線が合っていても、鮮明にピッタリ合っているように聞こえず、少し甘く聞こえてしまいます。 また、実際にも、第1楽章の第1部で、弦や木管のメロディーが拍の裏から入ってきて、小節の頭で金管や打楽器が合の手を入れて締めるというパターンが多く出てくるのですが、この掛け合いがちゃんと決まらず、何となくギクシャクしてしまう事もしばしばありました。 しかしその一方で、ピアノになった時の音の美しさは非常に印象に残りました。 音に響きが残っているため、ピアノになっても音が痩せず、ダイナミクスは小さいけれども暖かい豊かな音になっているのです。 特にフォルテから一気にピアノに小さくなる際の美しさは際立っています。 まるで、フォルテでは大河のように幅の広い光の帯が、ピアノになると同時に絞られたように一瞬にして細くなるものの、絞られた事でかえって濃密になり、細い糸のような光がそれまでよりもなお一層強く光り輝くかのようです。 わたしには、このピアノの音は、フォルテの時以上にエネルギーがあり、より強く意志を感じられました。(2003/2/8) |