C.サン=サーンス 交響詩「オンファールの糸車」

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏ニューヨーク・フィルハーモニック
録音1923年4月23日
発売及び
CD番号
BIDDULPH(WHL 025-26)


このCDを聴いた感想です。


 メンゲルベルクのサン=サーンスの演奏は少なく、この「オンファールの糸車」一曲きりしかありません。
 その代わりといってはなんですが、この曲は、二回も録音を行なっています。
 一回目が今回取り上げる1923年で、二回目は1929年で、両者ともオーケストラはニューヨーク・フィルです。
 年代的にはどちらもメンゲルベルクの録音の中では初期にあたり、約6年という短期間で2回目の録音を行なったのには、おそらく録音技術の急速な進歩が最も大きな理由だったのではないかと思います。
 1923年の録音の時には、まだ電気録音が存在せず音が悪い機械録音しかなかったのですが、その後電気録音が開発され、機械録音に較べて格段に音質が向上したため、再度録音し直したのでしょう。
 実際、機械録音時代に録音された曲のほとんどが、録音年代やオーケストラにだいぶ違いがあるとはいえ、後年、再録音し直されている点からも、想像できます。

 演奏スタイルは新旧録音とも大きな違いはありませんが、1923年の録音の方が、より直線的な音楽の流れになっています。
 しかも、この傾向は、メンゲルベルク以外の他の指揮者の演奏と較べても強い方で、少しテンポを変化させた方が味わいが出るのではないかと思われるような部分まで速めのインテンポで貫かれています。
 そもそも曲想からいっても、それほど一定のテンポに固執するような曲ではないのですが、メンゲルベルクは妙に律儀に同じテンポを保っています。
 そのため、たしかに推進力には富んでいるのですが、かわりに余裕が無くなり、妙に急き立てられているような印象も受けます。
 ただ、この急かされるようなテンポになっているのは、必ずしもメンゲルベルクがそういう音楽を望んだわけではなく、もしかしたら録音時間の制約により速めのテンポにせざるを得なかったのかもしれません。
 当時はおそらく録音時間が非常に短く、メンゲルベルクはついには楽譜を何箇所かカットして曲自体を短くする事で、演奏時間を7分弱まで縮めています。
 メンゲルベルクは、チャイコフスキー交響曲第5番の第4楽章のように、曲によっては収録時間と特に関係なく楽譜を一部カットする事もよくあるのですが、この「オンファールの糸車」の場合には、1929年の録音の方ではカットしていない点を考えると、1923年のカットは、おそらく収録時間の短さから来るものだと思います。

 また、メロディー等については、録音が古いのでニュアンス云々について書いてもほとんど意味が無いのかもしれませんが、メンゲルベルクにしては珍しくあまりメロディーを歌わせていません。
 といっても、オーケストラの音色自体は割と原色系なので、地味ということは無いのですが、意外にあっさりしていて、重量感は感じられず、むしろ風通しの良い明るめの音です。
 そういう点では、よりフランスらしいサウンドと言えるかもしれません。(2002/8/30)


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