C.サン=サーンス 交響詩「死の舞踏」

指揮エーリッヒ・クライバー
演奏ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音1930年4月9日
カップリングウェーバー 「プレチオーザ」序曲 他
発売TELDEC
CD番号0927 42664 2


このCDを聴いた感想です。


 色彩ではなく、表情が豊かな演奏です。
 サン=サーンスの曲ですからパリ管などのフランスのオーケストラによる演奏も多く、それらに較べると、この演奏はドイツのオーケストラで録音も古いこともあり、色彩はそれほど豊かではありません。いや、それほどどころかほとんど灰一色と言っても良いかもしれません。頭の方で出てくるフルートのソロの音色なんてまさにその典型でしょう。重くくすんだ音で、深みや渋さは十二分ですが華やかさや彩りとは無縁です。
 たしかに、「死の舞踏」という題材ですから暗い音の方がふさわしいようにも思えるかもしれません。しかし、暗ければ即ちそれが死のテーマに相応しいかというとそうではないと思います。少なくともこの曲の場合は「舞踏」ということもあり、暗くても沈むのではなく、もっとアクティブな要素が欲しいところですが、この演奏の音色は、モノトーン過ぎて、ひたすら暗いだけになっています。
 しかし、これだけ音色が重く暗いのに、音楽はむしろ情熱的と言ってよいぐらいの激しい印象を受けます。
 その理由が、大げさなまでの表情の豊かさなのです。
 メロディーへの力の入れ方、リズムの激しさ、特徴を極端までに強調しています。
 例えば、ソロ・ヴァイオリンなどによく出てくるレガートのメロディーがありますが、これはビブラートをたっぷりとかけて歌いまくります。レガートを強調するために場合によってはポルタメントさえ使っています。しかも、このポルタメントはソロ・ヴァイオリンだけではありません。ヴァイオリン全体で演奏する時ですら使っているのです。テンポまで少し緩めてけだるげに歌っているものですから、なんだか退廃的な雰囲気まで漂っています。
 その一方で、これが交響曲第3番<オルガン付き>の冒頭とか第2楽章の頭に似た、同じ音が連続するリズム系の伴奏では、まるで対極の激しい音楽になっています。音は短く鋭く、突き刺すような音で強く出てきます。一音一音はっきりと力強く、レガートのメロディーの退廃的な雰囲気を叩き壊して強硬な雰囲気へと一変させます。音が鋭くしかも重さを伴っているところはまるで弾丸並で、強く圧力をかけてくるところといい、なんだか軍隊を思い起こさせます。
 この強硬な雰囲気と退廃的な雰囲気との対比で表情が大きく変化しているのですが、それだけではなく、さらにそれが組み合わさって、フォルテの部分などでは、レガートで退廃的な雰囲気を出しながら音は太く力強いという、まるで強制的に退廃させられているような感覚すらしてきます。まあ、考えようによっては、これこそ死を間近に感じて半ばヒステリックに踊っているという曲本来の趣旨には最も近いのかもしれません。
 音色としては灰色一色ながら音楽は激しく情熱的で、録音の古さも含め「モノクロ時代のバイオレンスホラー(そんなジャンルあるのかどうかわかりませんが)」といったところでしょうか。音色がモノクロなところがわたしはどうも今一つだったのですが、人によってはむしろそこが良いという方もいらっしゃると思います。(2007/2/3)


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