C.M.v.ウェーバー 歌劇「オベロン」序曲

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1940年10月13日
発売及び
CD番号
キング(KICC 2056)
Q DISC(97016)


このCDを聴いた感想です。


 この曲のメンゲルベルクの録音は4種類残っています。メンゲルベルクが録音を残した曲の中でも多くの録音が残っているものの一つです。
 古い方では1922年のニューヨーク・フィルとの機械録音、新しい方では今回取り上げるコンセルトヘボウ管との録音が1940年と年代も幅広く、この4種類を聞き比べてみると、メンゲルベルクがどういう音楽に向かって行ったかがなんとなく見えてきます。もちろん、どこまで合っているかはわかりませんが。
 まあ、1922年の機械録音は機器の性能による制約が厳しかった頃なのでさておくとして、1928年のスタジオ録音や1931年の映像が残っているスタジオ録音(これは1928年の感想ではライブと書きましたがスタジオ録音の誤りです)あたりと比べて、1940年の演奏を聴くと、より自然な流れを重視する方向を目指していたのではないかと思いました。
 この自然な流れというのは、あくまでもメンゲルベルクの感覚(美意識といってよいかもしれません)においてです。
 例えばテンポにしても、一定の速さを保って滞りなく進めてはいません。おそらく、楽譜のテンポの指定はアレグロのならアレグロのまま変わりが無いとしても、曲調に合わせて部分部分でそこにふさわしいテンポはそれぞれ異なると考えたためでしょう。ただ、そうすると同じアレグロでもテンポにかなりの幅が生まれてしまいます。そこを滑らかにつなぐ、即ちそれが自然な流れであり、メンゲルベルクはこれを目指していたのではないでしょうか。
 序奏のアダージョの部分を、1940年の録音が最もテンポが遅くたっぷり歌い込んでいます。その一方でアレグロはかなり快速なテンポであり、その落差はおそらく4種類の中で最も大きいものです。しかし、アダージョからアレグロに変わる部分のインパクトは、むしろ昔の録音の方があります。アレグロに入った瞬間からトップスピードという爆発力は昔の録音の方がハッキリと感じられます。ただし、その分、どうしても聴いている方は一瞬、流れから置いて行かれたようにも感じてしまうのです。もちろんそこがインパクトを生み出す素ではありますが、メンゲルベルクは、インパクトはアレグロの直前に入る全合奏のジャンという和音だけで十分だと考えたようです。1940年の録音のアレグロはインパクトよりも流れを重視しています。テンポ自体はたしかに速いのですが、いきなりトップスピードで飛ばしたりはせず、立ち上がりは滑らかにきれいにカーブを描いてトップスピードに乗せています。これなら聴いていても曲から取り残されること無く、自然に速いテンポに慣れて行きます。
 序奏からアレグロに変わる部分でのインパクトは無くなりましたが、その代わりにクライマックスへ向けての盛り上げ方は、より劇的になっています。
 まず、クライマックスでのテンポの落とし方が大きい。さらに、そこに至るまでも、クライマックスでいきなりテンポを落とすのではなく、その少し前から少しずつブレーキをかけていくことで、聴いている方の気持ちも自然に盛り上がってきます。大きくテンポを落としているのに、唐突ではないため、意外と不自然ではないのです。
 部分的にあちこちを抜き出せばテンポがバラバラなはずなのに、通して聴いてみると一本の流れがありそれに沿っている、これを完璧に体現できているとは言えなくても、少なくとも理想により近づいている演奏です。ただ、その理想が一般的かどうかというと、それまはまた別の問題です。個人的には好きなんですが。(2005/12/17)


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