C.H.パリー 「イェルサレム」

指揮クリストファー・ロビンソン(Christopher Robinson)
演奏オルガン:ロジャー・ジャッド(Roger Judd)
聖ジョージ教会合唱団(Choir of St.George's chapel)
録音1987年7月17・18日
カップリングパリー 「I was glad when they said unto me」 他
「ヒューバート・パリー卿の教会音楽」の一部
発売hyperion
CD番号CDA66273


このCDを聴いた感想です。


 ロンドンの夏の祭典「プロムス」のラストナイトで演奏されることで知られるこの曲ですが、そこで演奏されるオーケストラによる伴奏は、後にエルガーが編曲したもので、原曲ではありません。
 オーケストラではなくオルガンの伴奏が本来の姿で、このCDは、その原曲による演奏です。
 オルガンのみの伴奏は、エルガー編曲の華やかなオーケストラ伴奏を聴き慣れた耳には、かなり地味に聞こえます。
 なにしろ、音色はバリエーションが限られていますし、強弱のダイナミクスもあまり差が無く、その上、パーカッションが無いので、メリハリもさほど感じられません。
 つまり、曲の最初から最後まで同じような調子なのですが、実は、逆にこれがこの演奏の魅力の大きな要因になっています。
 華やかさが無いという事は、裏を返せば、華美を排して禁欲的という事でもあり、俗世を離れ、より崇高な雰囲気が強くなります。
 これにオルガンによる伴奏が、雰囲気をよりいっそう厳粛にしています。
 テンポも、他のエルガー編曲の演奏よりも幾分ゆったりとして重々しいのに、さらに、これはオルガンという楽器の特性なのでしょうか、伴奏のオルガンの音の移り変わりが、合唱よりほんのわずかに遅れていて、これがまた、重々しさに拍車をかけ、厳かな雰囲気をさらに高めています。
 また、曲の後半に向かっては、さすがに少しずつ盛り上がっていくのですが、その盛り上がり方があまりに緩やかなため、逆に、巨大な飛行機が音も無くゆっくりと離陸するような、ある意味神々しさがそこにあります。
 この曲を、エルガーの編曲で聴いていると、イギリスに対する愛国心を強く訴えられ、立ちふさがる障害を積極的に排除していこうという、固い意志が表れているように思えるのですが、原曲で聴いていると、愛国的なイメージが薄くなり、力によって現世にエルサレムを打ち立てるのではなく、祈りによって、精神的にエルサレムを見出す事を目指しているかのように感じられます。
 正しく、このCDのタイトルどおり、「教会音楽」という雰囲気の演奏です。
 ……もっとも、歌詞の意味を考えると、本当は、愛国的な意味合いの方が、正しいようですが。(2003/11/8)