C.グノー 小交響曲 変ロ長調

演奏アテナ・アンサンブル
録音1978年11月
カップリングプーランク ピアノ6重奏曲 他
発売Chandos
CD番号CHAN 6543


このCDを聴いた感想です。


 いかにも室内楽らしい演奏でした。
 この曲は、「交響曲」と名前が付いてはいるものの、頭に「小」という接頭辞がつくぐらい小規模なものです。オーボエとクラリネットとファゴットとホルンが各2本+フルート1本という9重奏で、それぞれのパートを一人で演奏することといい、要するに分類としては室内楽にあたる管楽アンサンブルの曲です。
 ただ、この9重奏という人数は室内楽としては結構微妙です。これが4重奏、5重奏ぐらいだと指揮者が付くことはまず無く、逆に9重奏より人数の多い13重奏あたりになると、指揮者が付くことの方が多いのではないでしょうか。では、この曲のような中間の9重奏の場合ではどうなるというと、付く場合、付かない場合どちらであっても不思議ではありません。実際、この演奏では指揮者はいませんが、以前取り上げたミュンヘン・ブレーセルアカデミーの演奏では、ブレツィーナが指揮者として付いています。
 そのミュンヘン・ブレーセルアカデミーの演奏と、この演奏を較べると、指揮者のいるいないがそのまま演奏の特徴として表れています。
 ミュンヘン・ブレーセルアカデミーの方は、指揮者が最高責任者として存在しているため、各奏者は指揮者を中心とする放射状の線で縦につながっていて、良くも悪くも指揮者の手元の一点で音楽がまとまっています。
 それに対してアテナ・アンサンブルの方は、指揮者という絶対者がいないため、各奏者同士が横につながる必要があります。同じ動きをしているもの同士が集まり、そこからまた他の違う動きをしているパートと音楽をあわせるわけです。
 ミュンヘン・ブレーセルアカデミーが、室内楽といいつつ、管弦楽の小規模版といった雰囲気で、アテナ・アンサンブルは、あくまでも室内楽の延長線であり、もっと小さい3重奏や4重奏の大規模版といった雰囲気です。
 演奏の魅力も、それぞれの特徴がそのまま結びついています。
 ミュンヘン・ブレーセルアカデミーの演奏は、規模の小ささを感じさせないぐらい堂々としていて、まさに交響曲をそのまま小さくしたようです。また、指揮者が全体を捉えてぐいぐい引っ張っていけるので、音楽にキレがあります。
 その一方で、アテナ・アンサンブルの演奏は、ミュンヘン・ブレーセルアカデミーほど堂々としていません。しかし、各奏者がお互いを良く聴いて合わせようとしている空気は非常によくわかります。特にメロディーの最後の音をいくつかの楽器が一緒に吹くところなどは、「いいか、いいか、ピタリと揃って着地するぞ」という心の声が聞こえてきそうですし、音階をいくつかの楽器がリレーしていく動きなども、次の楽器が入りやすいように丁寧に受け渡し、後から入ってくる方も、スムーズにつながるよう細心の注意を払って入ってくる様子が、まさに目に浮かぶようです。
 9重奏ながら、それほどの人数の多さを感じさせないぐらいの緊張感があり、柔らかく優しく演奏しています。
 それにしても、この二つの演奏を聴いて、改めて指揮者の存在の大きさを感じました。
 どちらの演奏も、それぞれ単独で聴いていれば、おそらくそこまで気が付かなかったと思います。しかし、二つの演奏を較べてみると、その違いに驚きました。
 指揮者がいる方が良い悪いではなく、指揮者がいるいないで、たしかに音楽が異なっているのです。ミュンヘン・ブレーセルアカデミーはたしかに目に見えない最高権力者がいて、アテナ・アンサンブルからは気配がありません。
 演奏する方としても、改めて「合奏」というものを考え直す演奏でした。(2009/8/29)


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