C.E.アイヴズ 「アメリカ」の主題による変奏曲

編曲:ウィリアム・シューマン

指揮ホセ・セレブリエール
演奏ボーンマス交響楽団
録音2000年5月30・31日
カップリングW.シューマン ヴァイオリン協奏曲 他
発売NAXOS
CD番号8.559083


このCDを聴いた感想です。


 この演奏には、他の演奏とは少し異なる面白い点があります。
 それは、最初の賑やかな全合奏の後の静かにテーマ(イギリス国歌)が演奏される部分で、ここは、弦楽器のコル・レーニョ(弦楽器が弓の背で弦を叩くように演奏する奏法)の伴奏をバックに、ミュート(消音器)をつけたトランペットが静かにメロディーを奏でるのですが、面白いのはそのミュートです。
 ミュートは日本語訳すると「消音器」というだけあって、音を小さくする効果もあるのですが、それ以上に音色を変化させる事を目的に指定されることがよくあります。
 そのミュートにも、いろいろ種類がありますが、クラシックの場合は、たいていストレートミュートが使われます。
 ストレートミュートは、円錐状の、まあ例えるなら金属できた三角フラスコみたいな形をしていて、先端の尖った方から楽器のベル(音が出る朝顔状の部分)に差し込みます。
 その状態で演奏すると、普段の華やかな音色と違い、『ミー』というような押し潰した金属質な音色になります。
 わたしが今まで聴いた限りでは、この曲のミュートは、おそらく全ての演奏で上記のストレートミュートを使っていました。
 ところが、この演奏は、どうもストレートミュートではなく、カップミュートという別の種類のミュートを使っているようなのです。
 カップミュートというミュートは、三角フラスコを丼の中に置いたような形で、これをストレートミュートと同じように尖った部分をベルに差し込むと、丼の縁が、ちょうどベルの縁を覆うような感じになります。
 このミュートは、クラシックよりもジャズ等のポピュラーナンバーで使われる事が多く(たぶん)、音色も、ストレートミュートの『ミー』という音色と違い、もっとポワポワした、鼻にかかったようなちょっと間が抜けた音色です。
 曲中で、ストレートミュートがカップミュートになっている影響は大きく、雰囲気は結構違いがあります。
 ストレートミュートの時は、押し潰したような金属的な音色のため、音が締まっていて、緊張感があり、どことなく厳粛な雰囲気が漂っていました。
 それがカップミュートになると、一気に力が抜け、緊張感は無くなってしまうのですが、その分、リラックスしていて、なんだか家庭で談笑しているような楽しげな雰囲気まで感じられます。
 いや、正直言いまして、ミュートが変わったぐらいでこれほど雰囲気がガラッと変わるとは驚きました。

 さて、ミュート以外の部分について印象としては、横の流れの良さを感じました。
 一つ一つの音が立っているといったキレの良さで勝負するのではなく、音と音とのつながりを重視しています。
 そのため、ここ一発という部分での迫力は少し弱いのですが、その分、かえってメロディーの流れがよくわかります。
 しかも、メロディーを重視しているからといって、むやみに抑揚をつけたりするのではなく、大河のようなゆったりとした流れで進んでいて、これがまた、あまり細かい動きがないメロディーとよく合っています。
 ただ、ちょっと残念なのが、フォルテの時、音の出だしが少々荒っぽくなり、アンサンブルも乱れがちになる点です。
 また、わたしがこの曲を聴く時は常に注目している第5変奏のアクロバティックなトランペットのソロ(正確には二人で交代に吹いているのですが)も、少々粗く、金管に定評があるイギリスのオケにしてちょっと物足りない気もしました。
 それでも、全体的には高いレベルですし、なによりも、このCDは、入手しやすい価格というのも大きな魅力の一つです(笑)(2003/9/27)


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