演奏 | ピアノ:ニーナ・ドイッチュ |
録音 | 不明(1975年頃?) |
カップリング | アイヴズ ピアノソナタ第2番 他 「Ives: Solo Piano Music」の一部 |
発売 | VOX |
CD番号 | CDX 5089 |
この演奏は、オルガン独奏による原曲を、演奏者のニーナ・ドイッチュがピアノ版に編曲したものです。 「アメリカの主題による変奏曲」の編曲としては、原曲よりも有名なW.シューマンによるオーケストラ版がありますが、このピアノ版には、ピアノ独奏ならではの特徴が表れています。 鍵盤楽器の独奏という点では、原曲のオルガン版に近いのですが、オルガンほどは音色に大きく差をつけられません。 しかし、ピアノ自体、もともと表現力の大きな楽器ですから、音色の差が小さくても、ニュアンスに差をつけることで、豊かな表情を見せてくれます。 さらに、オルガンには無い歯切れの良さがあり、音のアタックがハッキリとついてシャキっと爽快です。 ピアノは、音の立ち上がりが早く、短く切りやすいため、小回りが効かないオルガンや大所帯なオーケストラに較べて、テンポも速くすることができます。 例えば、オーケストラでの演奏時間は約7〜8分、オルガンに至っては10分近くかかっているのに較べて、この演奏は5分強と、オルガンの演奏の半分くらいです。 もっとも、これには裏があって、実は、第5変奏(フルートの主旋律にトランペットの分散和音の速い対旋律が絡むパターン)の後半18小節をカットしているのです。 ですから、オーケストラ版と較べても2分も差が出るほど無茶苦茶な速さではないのですが、それでも速いことに変わりはありません。 もともと10分近くかかっているオルガン版よりは全てに渡って速く、オーケストラ版とも、アレグロのように指定自体が速いテンポの部分はそれほど違わないのですが、遅いテンポ指示の部分でもピアノ版はあまりテンポを落とさず速めに弾いています。 こういったテンポ面では、一人で演奏しているメリットを生かして、速いながらも、かなり激しく伸び縮みさせています。 変奏の中で唯一の短調である第4変奏は、楽譜に「ポロネーズ」と副題がついているのですが、ドイッチュは、まさしくポロネーズのように、小節内で頭を突込み気味にして後ろで抜いて引っ張るといった感じに、大きく崩して弾いています。 これだけ特長があるピアノ編曲ですが、さすがに迫力といった点ではオルガン版やオーケストラ版にはかないません。 どうしても音の厚みと重さに差が表れてきます。 しかし、迫力の代わりに一歩引いた涼しさ、重厚さの代わりに風のような軽さがあり、そこがこの演奏ならではの魅力になっています。 ちなみに、このCDには録音年月日が表記してありません。 そのため録音年は不明としておいたのですが、リーフレットに初出が1976年と書いてある点から、おそらく1975年頃ではないかと思います。(2003/7/19) |