指揮 | ジェラード・シュワルツ |
演奏 | シアトル交響楽団 |
録音 | 1991年10月15日 |
カップリング | W.シューマン 交響曲第5番 他 |
発売 | ポリグラム(DELOS) |
CD番号 | IDC-4308(DE 3115) |
引き締まった響きのすがすがしい演奏です。 決して、華やかさだったり、スケールが大きな演奏ではなく、こじんまりとまとまっているのですが、響きが充実しているため、貧弱には聞こえません。 大人数のフルオーケストラで演奏している筈ですが、まるで室内楽か室内管弦楽団が演奏しているような緊密さがあります。 たしかに考えてみれば、指揮者のシュワルツは、もともとは室内管の指揮者ですから、こういう音楽作りは得意なのでしょう。 それぞれの楽器の音が細い一本の糸に集約して、それが厳密に測って等間隔に並べられているように、ちょっとでもずれたら全てが壊れてしまいそうな緊張感を保ちつつ、一つ一つの和音に澄んだ響きがあります。 その一方で、室内管でよく見られる、和音の性格をダイレクトに見せたような、鋭い、別の言い方をすればどぎつい表現にはしていません。 協和音が明るく響くのはもちろんの事、例えば、間奏部のように、不協和音が連続して表れる部分でさえ、不協和音をあからさまに聞かせるのではなく、できるだけ協和音に響きを近づけ、不協和音にもかかわらず、楽観的な希望のような明るさがあります。 また、これだけ和音に力を入れているのであれば、和音ばかり耳に入ってきて、メロディー等の横の流れが感じられない演奏と思われるかもしれませんが、メロディーはメロディーで丁寧に演奏されています。 といっても、強弱を駆使して濃密に表情付けをしているわけではなく、ごく薄い表情であっさりと歌わせているのですが、音と音のつながりが良く、この横の流れが「動」となって、縦の和音の「静」と、調和を崩さない程度の対照となり、自然と耳に残るようになっているのです。 しかも、面白い事に、「静」である和音は、どこまで行っても明るく、逆に「動」であるメロディーの方が、淡々としている分、ちょっと沈んだ落ち着いた雰囲気があります。 音楽に陰影が感じられる、なかなか妙なる取り合わせです。 おまけで、もう一つ。 この曲の第五変奏は、J.S.バッハのブランデンブルク協奏曲第2番の終楽章の如く、トランペットにアクロバティックなソロがあるのですが、この演奏のソロは、軽くさりげなく吹いています。 おそらくかなり難しいソロのはずですが、ことさらテクニックを誇ることなく、もちろん、何の危なげも無く、単にメロディーに絡む対旋律として当たり前のように演奏しています。 指揮者のシュワルツが、室内楽の指揮者である以前に、もっと前は、ニューヨーク・フィルで首席を務めるほどのトランペット奏者だった事を考えると、こういう吹かせ方にも、シュワルツの、トランペット・ソロに対する考え方が表れているように思われます。(2003/4/5) |