C.E.アイヴズ 「アメリカ」の主題による変奏曲

演奏オルガン:アルトゥーロ・サッケッティ
録音1987年2月
カップリングセイヤー 「ロシア」の主題による変奏曲 他
「Organ Music in America」の一部
発売ARTS
CD番号47272-2


このCDを聴いた感想です。


 このオルガンによる独奏は、以前に感想を書いたW.シューマン編曲のこの曲のオリジナルに当たります。
 まあ、要するに、ムソルグスキーのオリジナルピアノ版の「展覧会の絵」とラヴェル版の「展覧会の絵」の関係みたいなものですかね(笑)
 派手な編曲版に較べて、原曲版が渋めな点も全く一緒で、やはり色彩豊かなフルオーケストラに較べると、単独の楽器である分、色彩感に乏しい印象を受けます。
 ただ原曲がピアノである「展覧会の絵」に較べると、こちらはオルガンだけに、いろいろな音色に変えられるため、より一層華やかです。
 ただ、オルガンならではの不利な点もあります。
 一つは、細かい動きが苦手な点で、細かい音符が続く部分ではどうしてもテンポを遅くしなくてはなりません。
 そのため、それに伴い演奏時間も大幅に伸び、シューマン編曲版では、どの演奏も7分程度なのに、オルガン版では9分程度もかかってしまっています。
 さらに、本当はオルガンの方がオリジナルなのですが、シューマン版で聴き慣れてしまっているため、何だか変な感じがするところもあります。
 その最たるところが、最後の変奏である第5変奏で、シューマン版では速いテンポに乗って、トランペットがスタッカートでアクロバティックな対旋律を演奏していますが、このトランペットの対旋律が、実はオリジナルでは中低音のテヌート気味の音だったのです。
 そのため、シューマン版で聴いた時には、その対旋律がまるでピンポンのように軽やかだと思ったのですが、オリジナルでは、まるで水中でボールをやり取りしているみたいで、妙にもどかしく、聴いていると思わず前につんのめりそうになってしまいました。
 ただ、逆にオルガンならではの魅力が感じられる部分もあります。
 それは、さきほど書いた第5変奏の直前の間奏曲の部分で、ここは主題が変イ長調とヘ長調の両方で同時に現れるという、後のアイヴズを予見させるかのような前衛的な手法が見られるところでもあるのですが、この二つの調性が同時に出てくる響きが、シューマン版では楽器の種類が多い分、どうしてもバラバラに聞こえます。シューマン自身もその点は気付いていたようで、使うのを金管楽器だけに絞り、響きをまとめようとはしているのですが、それでもまだ一歩及びません。
 それが、オリジナルのオルガンで演奏されると、この二つの異なる調が、たしかに別々の調として響いている筈なのに、全体としてはまるでコラールのように溶け合った独特の美しさがある響きになっているのです。

 わたしは、シューマン版のスコアしか持っていないのですが、それを見ながら聴いてみると、シューマン版とオリジナルとで、楽譜上に少し大きな違いがあることに気がつきました。
 それは、第1変奏の後半で、シューマン版のスコアには特に何も書いてないのですが、オリジナル版を聞いた限りでは、本来は変奏の最後の7小節間は繰り返すようです。

 今回、オリジナル版を聴いていて初めて気がついたのですが、よく考えたら、この曲はアイヴズが17歳という、現代日本ではまだ高校生ぐらいの年齢の頃に作った曲で、デビュー作みたいなものなんですよね。
 既に、14歳の時から地元の教会のオルガン奏者だったとはいえ、よくまあその若さでこれだけの曲を作れたものです。
 ただ、この曲がメジャー……とまでは言えないとしても、ある程度知られるようになったのは、おそらくシューマンによる編曲が大きく影響したのではないか思います。(2002/11/22)


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