C.E.アイヴズ ニュー・イングランドの3つの場所

指揮クリストフ・フォン・ドホナーニ
演奏クリーブランド管弦楽団
録音1993年6月
カップリングアイヴズ 管弦楽曲集第2番 他
発売DECCA
CD番号443 776-2


このCDを聴いた感想です。


 とてもクリアな演奏です。
 アイヴズの曲は、第2曲の「コネティカット州レディングのパットナム将軍の野営地」に代表されるように、複数のメロディーがまるで手当たりしだい放り込んだようにごちゃ混ぜに登場します。古典派などの曲のように整然と絡み合っていないため、音と音とがぶつかり合い、ともすれば全体が一つの雑多な響きになってしまって、何が何やらわからない曲に聞こえてしまいます。アイヴズもある程度はそういう雰囲気を望んで書いたらしいので、それはそれで間違っていないのですが、聴く方としては、そういうカオスな響きはどうしても抵抗を感じることがあります。ドホナーニの演奏は、そういう抵抗感を和らげ、聴くハードルをかなり下げてくれる演奏なのです。
 たしかに動きはいろいろ出てきますが、その一つ一つの動きは非常にクリアで、くっきりと浮かび上がっています。メロディーがいくつも重なっても、ごちゃごちゃとした響きの中に埋もれてしまわず、楽にたどれるのです。これは動きの浮かび上がらせ方のバランスが良いことと、録音の新しさによる利点もあると思います。よく、聴いていてわけがわからなくなるのは、いくつもメロディーが重なるからで、そのメロディー自体は、民謡として知られていたりするものだったりと、親しみやすいものですから、メロディーが浮かび上がって聞こえれば、わりとすんなり聴くことができます。
 さらに、打楽器などのリズム系の音は、鋭く、それでいて出た後はすっと抜く事で、キレのあるリズムになり、しかもメロディーをかき消したりしません。リズムが他を消してしまうのではなく、ポイントポイントできっちり自己主張しています。これにより、メロディーがいくつものテンポで次から次へと重なり合っても、曲が拍子も何も感じられずにダラダラと続くのではなく、メリハリのついた音楽になっています。
 また、第3曲の「ストックブリッジのフーサトニック河から」など、夕暮れのような物憂げな雰囲気だけではなく、下のほうでうねうねとうごめく混沌とした雰囲気もしっかりと表現されていて、その二つの雰囲気が相互に絡み合い、しだいに盛り上がって頂点に達する展開なども、一貫した流れがあり、2次曲線のようにきれいな弧を描いて盛り上がっていきます。
 機能的にも優れていて、その技術はすごいものですが、ただ、あまりにも整っているため、どうしても細部まで計算され尽くしたという印象も受けるのです。わたし自身は、そういう人為的なほどピタリと合わせた部分もこの演奏を好む理由の一つなのですが、アイヴズらしい、自然な混沌を求める人には、あまりお勧めできない演奏かもしれません。(2008/10/11)


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