C.E.アイヴズ ニューイングランドの3つの場所

指揮デニス・ラッセル・デイヴィス
演奏セント・ポール室内管弦楽団
録音1978年5・6月
カップリングコープランド 「アパラチアの春」
発売ビクター音楽産業(PRO ARTE)
CD番号VDC-1053


このCDを聴いた感想です。


 まるで、派手な色の花ばかり集めて一つの花束にしたかのような、全体的にカラフルで、しかも部分部分も自己主張が強く感じられる演奏です。
 この曲は、アイヴズらしく、いくつもの互いに接点の無いメロディーが同時に登場して、それがぶつかり合うという、独特の雰囲気を持っているのですが、この演奏は、そのぶつかり合うところを、あからさまにハッキリと表に出しています。
 まず、パーツであるそれぞれのメロディーは、豊かな表情で歌い込まれていて、原色のように強く自己主張しています。
 その存在感は、一つのメロディーだけに注目すれば、周りの雑多な音に惑わされず、楽に追って行けるほどです。
 そういう歌い込まれたメロディーが、同時に演奏され、しかも、聴き易くしたり響きを和らげるために歩み寄ったりせず、正面からぶつかり合っています。
 ほとんど、磁石のN極とS極を無理矢理くっつけようとしいるようなもので、響きがぶつかり反発し合い、それでもなお相手に被さりお互いに破壊していく様は、エネルギッシュで、今にも空中分解しそうな危い魅力があります。
 ここで、空中分解しないように音楽を引き締めているのがパーカッションです。
 パーカッションを強めに入れる事でメリハリがつき、雑多なメロディーをただ一緒に演奏しただけのものではなく、一つの曲としてのまとまり、全体として大きな流れが感じられるようになります。
 その流れの中で、メロディー同士が自分の存在感をアピールしている様子は、さながら、原色の絵の具を何色も混ぜ合わせながら、いっこうに混ざり合って中間色にならないみたいなもので、ゴチャゴチャとモザイク状になりながらも、それぞれの原色の鮮やかさを保っています。

 指揮をしているデニス・ラッセル・デイヴィスは、コリン、アンドルーに続く第3のデイヴィスです。(と、わたしが勝手に思っているだけですが(笑))
 アンドルーと同じ1944年の生まれですが、二人のデイヴィスと違ってアメリカ生まれです。さらに、すでにバイロイトにも登場していたりと、なかなか世界的な知名度もあるようです。
 この3人目のデイヴィスは、アイヴズを聴く限りでは、メロディーとバランスの扱いに並々ならぬ上手さを感じました。
 バランスの方は、上記のメロディー同士のぶつかり合いの絶妙な扱いからそう感じたのですが、例えば、第3曲の「ストックブリッジのフーサトニック河から」でも、メインとなるメロディーは、陽が沈みゆく夕暮れのような物憂げな雰囲気を保ちながら、バックの混沌とした、まるでアンダーグラウンドの世界を思わせる暗黒の雰囲気をもった伴奏の動きが次第に表面に現れてきて、最後にはメインのメロディーが持つ物憂げながら安らいだ空気を、全て飲み込んでいってしまう展開など、現代社会を見ているようで、思わず唸らされました。
 これからを注目したい指揮者の一人です。

 なお、この演奏が録音されたのは1978年ですが、なんとデジタル録音です。
 デジタル録音が本格化するのが1980年代に入ってからという事を考えると、もっとも早いものの一つではないでしょうか。(2003/11/1)


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