C.E.アイヴズ 交響曲第1番

指揮マイケル・ティルソン=トーマス
演奏シカゴ交響楽団
録音1989年4月15〜17日
カップリングアイヴズ 交響曲第4番 他
発売SONY
CD番号SK 44939


このCDを聴いた感想です。


 この曲は、アイヴズがエール大学に在籍中に書かれたものです。その点では、卒業制作として書かれたショスタコーヴィチの交響曲第1番と同じような位置づけですね。
 その後の進路は、ショスタコーヴィチが職業作曲家となり交響曲もさらに14曲も書きましたが、アイヴズは音楽関係の職にすらつかず、全く異なっています。
 アイヴズは、大学卒業後は本業の保険業の合間に暇を見て作曲するという、某ロシア五人組みたいな活動でしたが、それでも交響曲を全部で4曲書いています。
 作曲年代は、第4番(1916)だけはちょっと離れて遅い時期ですが第1番(1898)から第3番(1904)まではわりと近い時期にまとまっています。
 第4番が大掛かりで内容が難解になっているのに比べ、第1番から第3番はかなり平易な内容で耳に馴染みやすく、その中でも第1番はもっとも西洋音楽の約束事が守られていて、意外性には欠けますが、その代わりわかりやすく安心して聞ける曲です。
 アイヴズお得意の全く異なるモチーフを同時に演奏して正面からぶつけ合うこともありませんし、メロディーも民謡調の素朴なものではなく、ヨーロッパのどこかのロマン派の作曲家が作曲したような、情緒はあっても泥臭さの無いもので、どこかすっきりとした印象を受けます。
 といっても、メロディー自体は決して悪いものではなく、第1楽章の主題の溌剌としていながら情感豊かなところや、第2楽章の冒頭の主題の明るいながらも少しけだるく寂しげな夏の夕暮れのような情緒や、第3楽章の工業を思い起こさせるような少し無機質なメロディーによる緊張感のあるフーガや、第4楽章の華やかで堂々としたメロディーなど、民謡調ではなくても十分に魅力的です。
 曲の構成も、後の作品ほど破天荒ではないため、『まさかこうくるとは……』と驚かされることは少ないのですが、『アイヴズって、普通に曲を作ってもちゃんと十分に楽しめる曲が作れるんだ』と別の意味で驚かされました。

 この曲の演奏はそれほど聞いたことがあるわけではないので、あまり他の演奏と較べてどうこうと言えるほどではありませんが、このティルソン=トーマスの演奏は、非常にスッキリとまとまっていて気持ちがよいものです。
 響きの厚みはそれほど厚くなく、どちらかいうと音のキレの良さが前面に出ていて、小編成のオーケストラの演奏に近い印象を受けました。
 また、シカゴ響にしては金管がかなり控えめで、ポイントでだけ硬くアタックをつけて、できるだけ他のパートの邪魔にならないように抑え気味になっています。
 豪快ではありませんが細部まで神経を行き届かせて小さくきっちりとまとめた演奏です。(2006/4/29)


サイトのTopへ戻る