C.ドビュッシー 海

指揮エーリッヒ・ラインスドルフ
演奏ロサンジェルス・フィルハーモニック管弦楽団
録音1957年3月16・18日
カップリングラヴェル 「ダフニスとクローエ」より第2組曲 他
発売EMI
CD番号CDM 5 65425 2 5


このCDを聴いた感想です。


「海」といえば、ドビュッシーの管弦楽曲の中でも代表的な作品ですが、実はあまり好きではありませんでした。演奏も定評のあるマルティノンなど、フランス系を初めとしてそれ以外のオーケストラのものまでいくつか聴いてみたのですが、どうも今一つピンと来ません。そんな時、このラインスドルフの演奏を聴いて、やっと「海」の魅力が、なんとなくではありますが、わかってきたような気がしたのです。
 今まで正統的な演奏では今一つ魅力がわからなかったのに、ラインスドルフでは違ったというのは、つまりこの演奏はあまり一般的な解釈ではないというわけなのです。
 まず、印象派らしい霞がかった自然な雰囲気ではなく、非常に明快です。リズムも『1、2、3、4……』と、拍がはっきりと意識され、音の移り変わりも明確です。全体で一つの雰囲気を作り出しているのではなく、音それぞれに輪郭があり、楽器ごとで雰囲気が完結しています。海といっても海での情景を描いた一枚の大きな絵というよりも、水なら水、船のデッキならデッキ、あるいは波頭だけ、というふうにそれぞれの部分だけを個別に取り上げたような感じです。部分に分かれすぎているためあまり海らしい雰囲気はなく、どちらかというと写生的な面を捨てた純粋な音楽に近くなっています。
 わたしにとっては、この雰囲気を捨ててリズムを明確にとった純音楽というが合っていたのでしょう。今まで聴いた演奏では、なんだか海っぽい雰囲気は感じられるけど捉えどころが無くどうもはっきりしない、と思っていたのが、なるほどこの楽器がこう順番につながって頂点に至り、このメロディーに対しては対旋律と伴奏がこう絡んでくるのか、と明白にわかったことで、なかなか面白い曲だなと思うようになったのですから。
 雰囲気こそありませんが、伴奏まで詳細に動きがわかるぐらい拍を重視してできるだけ正確に演奏しています。ただ、正確を心掛けているからといって機械的というわけではありません。メロディーはよく歌っています。逆に単独の楽器によるソロは、伴奏から完全に際立って聞こえてくるため、これまた全体で一枚の絵という雰囲気を乱しており、ますます海らしさが失われていくわけですが。その代わり、ソロだけを見れば感心するぐらいしっかりと歌っています。特にコルネット(+トランペット)のソロは音に張りがあり、明快な動きと相まって上手さを感じました。
 この演奏によって、初めて海を面白く聴くことができたわけですが、一度面白さがわかってしまえば、これからは聴き所を意識しながら聴くことができるため、今までそれほど好きではなかった演奏も、また変わってくることでしょう。改めて聴き直してもみたいと思っています。(2005/5/14)


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