C.キュイ 歌劇「海賊」序曲

指揮ロベルト・スタンコフスキー
演奏スロヴァキア放送交響楽団
録音1992年1月22〜24日
カップリングキュイ 組曲第2番 他
発売MARCO POLO
CD番号8.223400


このCDを聴いた感想です。


 マイナーな作曲家は、曲を聴いたことは無いのはもちろんとして、そもそも作曲家の名前からして知らない場合がほとんどです。しかし、そういうマイナーな作曲家の中で、作曲家の名前自体は耳にする機会があるのに、曲はさっぱり演奏されないという人がたまにいます。
 このパターンで一番多いのが有名な作曲家の先生とかそういう縁の人物の場合で、たぶん最も著名なのはベートーヴェンなどの先生に当たるサリエリでしょう。もっともサリエリはモーツァルトの敵役として有名ですが。それだけ有名なサリエリですが、曲自体は、よっぽど興味を持って積極的に聴こうとした人でもなければ聴く機会はそれほど多くないと思います。恥ずかしながらわたし自身も未だに聴いた事がありません。
 ただ、サリエリも最近では再評価も進み、CDはそれなりに発売されています。
 一方、今回取り上げるキュイも、サリエリほど有名ではないにしても、名前はわりと知られています。なんといっても「ロシア5人組」の一員というブランドは偉大で、小学校の頃に音楽室に貼ってあった音楽関係の年表にも、ムソルグスキーやリムスキー=コルサコフなどの他の4人と並んでしっかり名前が書いてあったような覚えがあります。さらに、その5人組の中で、ボロディンに次ぐ年長者なのに、亡くなったのは最後です。つまり最も長生きしているわけです。さらに、音楽評論に力を入れていたために、他の作曲者の伝記などにも名前はちょくちょく登場します。もっとも、だいたい辛辣な批評をする憎まれ役としてですが。
 おまけに、音楽と関係ないところでも、本職の築城の権威として戦争関係の話で名前を見かけたりします。たしか、日露戦争の旅順要塞の構築にも関わっていたような話をどこかで聴いた事があります。
 このように、名前はちょいちょい見かけるのキュイですが、いざ曲の方はとなると、これはもう紛う事なきドマイナーです。5人組の中でキュイと同様にマイナーなバラキレフでさえ、同じ曲で2〜3種類録音がありますし、ビーチャムやスヴェトラーノフといったメジャーな指揮者の録音も残っています。
 ところがキュイとなると、まずCDを探すのも一苦労です。ほとんど言って良いぐらい発売されていません。今回取り上げる管弦楽曲集を含めてせいぜい5〜6種類が良いところではないでしょうか。あまりの人気の薄さに泣けてきます。
 ただ、一つフォローしておくと、そもそもキュイが主に作曲したのは歌劇とピアノ曲で、日本で人気の高い管弦楽曲をほとんど作曲していません。交響曲に至っては作曲しておらず、ジャンルの面で極端に不利なのです。
 しかも、その不利な点を覆せるほど曲に力があればまた話は別ですが、聴いた感じではなかなか難しいと思います。
 今回聴いてみた歌劇「海賊」序曲は、7分半ほどの曲で、歌劇本編を聴いた事が無いため本編とのつながりはわかりませんが、メロディーは優雅でけっこう耳に馴染みやすい良いメロディーです。雰囲気はメンデルスゾーンの「静かな海と楽しい航海」やチャイコフスキーのマンフレッド交響曲の第3楽章を思い出させるような、穏やかながらホッとする様な明るさがあり、海らしい感じです。
 途中には、力強く激しい部分もあり、タイトルの「海賊」を思い出させるような荒々しいものではなく、むしろ海軍のようにピシッと背筋が伸びた音楽ですが、これはこれでなかなか格好の良い音楽で聴き応えがあります。
 ただ、問題は変化に乏しいのです。
 たしかに、穏やかな部分と激しい部分があるものの、その二つが完全に分かれていて、それぞれの中ではあまり雰囲気が変わりません。変わる時は大きく跳ぶけれど、それまでは同じような調子でずっと続いていくとなれば、これはちょっと、常に興味を引くのは難しいのではないかと思います。
 部分部分の雰囲気は結構良いのですが、それだけにもうちょっと何か欲しいところです。
 もっとも、わたしが聴いたのはこの管弦楽曲集だけで、得意のジャンルの歌劇とピアノ曲を聴いていませんから、これを聴くとまたちょっと違うかもしれません。(2011/2/12)


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