C.A.フランク 交響曲 ニ短調

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1940年10月3日
発売及び
CD番号
HISTORY(205254-303)
日本フォノグラム(PHILIPS)(PHCP-3084〜97)
UNIVERSAL(PHILIPS Dutch Masters Vol.60)(468 099-2)


このCDを聴いた感想です。


 一音一音に至るまで濃い表情がつけられている粘った演奏ですが、意外に重くありません。
 軽やかなスピード感すら感じられる部分もあります。
 そう感じた一番の要因はおそらくテンポでしょう。
 メンゲルベルクらしくテンポは目まぐるしく変化しつづけ、冒頭のLentoのような遅いテンポ指定の部分などでは納豆の如く粘りに粘った遅いテンポですが、対照的に、速い部分は夏場の鯖の如く快速に飛ばしています。
 ただ、飛ばすといっても実はトップスピードはそれほどずば抜けて速くはなく、ベースとなるテンポ自体が速いのです。また音の入りがフライングすれすれぐらいに突込み気味なのも速い印象を強めています。
 さらに、これは録音のせいかもしれませんが、特にフレーズの最後の音をスパッと短く断ち切っているため、風通しがよくすっきりとしていてますます快活に聞こえます。
 また響きが細い点も軽さの要因の一つでしょう。
 これこそ録音が大きく影響しています。なにぶん1940年代のライブ録音なので楽器の音はともかく響きはあまり捉えられていません。なかでも低音の響きが少なく個々の楽器の音が目立っているため髪をすいたようにますます風通しがよく軽く聞こえるのです。
 さらにもう一つ大きな要因が『動き』です。
 速いテンポだけでなく遅いテンポの部分も意外と軽く聞こえるのはおそらくこのためです。
 メンゲルベルクは、速いテンポの部分ではまだ一定のテンポを保っていますが、遅いテンポの部分ではほとんど一小節ごと、いや一音ごとにテンポを動かし、しかもその動きが大きいためフレーズやメロディーの最後では曲が止まるんじゃないかと思えるぐらいテンポを落とすことも珍しくありません。
 そうなると後ろに引っ張られるような気がして当然重くなりそうなものですが、そう感じさせないのが『動き』なのです。
 テンポが遅くなればなるほど一つの音の時間は長くなり表情を込めやすくなります。実際、メンゲルベルクはテンポを遅くすればそれに比例して一つ一つの音符をより大きく歌わせいっそう濃い表情をつけています。
 そこが『動き』です。
 テンポが遅くなった時に単に音を長く引き伸ばしているだけなら音楽は停滞してしまいずるずると重くなってしまいますが、音符を歌いに歌って表情の変化という動きがあれば、前に動いている印象を受け、思ったより重く感じないのです。
 その結果、音色は暗めでテンポもここまでやって大丈夫かと思えるぐらい激しく伸び縮みさせているのに、意外なほどスピード感があり風通しが良い演奏に聞こえたというわけです。
 フランス風の華やかな演奏とは違う、かといってドイツ風のがっしりとした重い演奏とも違う、まあこれがオランダ風というわけでもないでしょうが、なかなか不思議な魅力のある演奏だと思います。(2004/6/19)


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