C.A.フランク 交響曲 ニ短調

指揮ジャン・マルティノン
演奏フランス国立放送管弦楽団
録音1968年12月
カップリングサン=サーンス 交響曲第3番<オルガン付き>
発売ワーナーミュージック(ERATO)
CD番号WPCS-21022(8573-83189-2)


このCDを聴いた感想です。


 音色の華やかさに惹かれる演奏です。

 テンポは速めでわりとサッササッサと前に進んでいきますし、メロディーもあまり歌い込まず、軽くさっと流しています。
 言ってみれば、あっさり醤油味といった感じで、薄口の演奏です。
 これだけだと、何の特徴も無い無個性の演奏かと思われる方も多いかと思いますが、その印象を大きく覆しているのが華やかな音色なのです。
 しかも、華やかといっても、ギラギラとド派手な成金趣味ではありません。
 キラキラと透き通るような純粋さがありながら、自然と薫って来るような華やかさを兼ね備えているのです。
 特に素晴らしいのが、第2楽章のcon sord(弱音器を着けた)した弦楽器の音色です。
 音の実体が消え去り響きだけが動いているような感じがして、宙に浮いているような浮遊感があり、まるで夢の中の出来事のような幻想的な雰囲気さえ感じられます。
 弦楽器以外の、例えば木管楽器にしても、全体で一つの纏まった響きなっているわけではなく、個々の楽器それぞれが、音色に独自性をかなり主張しているのにもかかわらず、決して浮いては聞こえず、華やかさと共に常に調和があります。
 当然金管楽器も、腹から突き出すような下からグッと支える太い音という感じではなく、もっと高い位置でパッと開いたような華やいだ音色です。
 全般的に、響きの中心が、ドイツ系等と違い、かなり高い位置にあります。
『足が地につかない』という言葉は、本来は悪い意味に使うのですが、わたしは逆に良い意味としてこの演奏に使いたくなります。
 この場合、本来の「浮ついた」という意味ではなく、足を地面にベタッとつけてどっしりと構えるのではなく、足が地面から離れて高いところに浮いているという状態を形容したいのです。

 実は、最初に書いた、テンポが速めであることも、メロディーの歌いこみが軽いのも、全て、音色に適ったものなのです。
 テンポが速くスッと流すことで、流れるようなスピード感が生まれていますし、メロディーも、必要以上に感情を込めたり、力を入れすぎないことで、華やかにして透き通った音色に合う爽やかさを生み出しています。
 しかも、このメロディーの歌わせ方は、ただ力を抜いているだけではありません。
 そこにはちゃんと、たとえメロディーだけを単独で取り出しても十分絵になるような歌があるのです。

 いろいろと魅力のあるこの演奏ですが、個人的にはもう一点魅力があります。300小節目の楽譜です。
 以前の、メンゲルベルクの演奏やカラヤンの演奏の時にも書いたのですが、第3楽章の第300小節目で、拍子が3拍子になって第2楽章のメロディーが戻ってくる直前の部分で、メンゲルベルクやカラヤン同様、楽譜に無い音を補っています。
 楽譜(1)で、赤丸で囲んだトランペットの音で、この中の2ndのBの音(下の方の音で、記譜上『ファ』の音)が、譜面上では、四分音符一つ分の長さになっていますが、これを倍の二分音符分の長さにして、さらに強調して次のAの音に続くメロディーの一部として演奏しているのです。
 わたしは、この音を是非入れて欲しいといつも思っていますので、この演奏のように入れた演奏を見つけると、とても嬉しくなります。(2002/4/26)


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