B.スメタナ 歌劇「売られた花嫁」序曲

指揮フリッツ・ライナー
演奏シカゴ交響楽団
録音1955年12月12日
カップリングドヴォルジャーク 交響曲第9番<新世界より> 他
発売BMG(RCA)
CD番号09026 62587 2


このCDを聴いた感想です。


 オーケストラが全体で同じ動きをして、しかもフォルティッシモで凄まじいスピードで駆け抜ける序曲といえば、グリンカの「ルスランとリュドミュラ」序曲が有名ですが、この「売られた花嫁」序曲も、音のつながりがレガートではあるものの、けっこういい勝負ではないかと思います。
 もう冒頭から陸上競技の短距離走のようにロケットスタートして、そのまま一気に突っ走っていきます。
 しかも、一部の和音を除けばほとんどユニゾン並みに同じ動きですからごまかしもききませんし、オーケストラの実力が丸裸です。
 まさに、ライナーとシカゴ響にうってつけの曲でしょう。
 全体の動きが揃っているというだけでなく、個々の音の粒まで輪郭がくっきりと付いています。
 この曲は、メロディーがゆったりと歌っている時でも、ほとんど常に伴奏におそらく16分音符と思われる細かいちょこまかとした動きがありますが、それがたとえ弱いピアノであっても潰れてしまうことなく一つ一つの音の粒まではっきりと聞こえます。
 音がそれだけ揃っているだけでも驚きなのですが、ライナーの演奏はそれだけに留まりません。
 音を合わせることだけに集中してただ機械的に並べたような無表情なものではなく、音楽に勢いがあり、なにより動きが生き生きと躍動しています。
 曲の途中で、カノンのように同じメロディーが高音から低音まで何小節が毎に順番に登場する部分がありますが、どのパートも、出てきた瞬間から待ってましたとばかりに元気一杯に弾け回ります。出だしの音も力強く、それが次々と出てくる様子は、目も眩むばかりの華やかさを感じました。
 録音が1955年とステレオ初期ですが、音そのものは雑音もなく鮮明で不満はありません。ただ、ステレオ初期によくあった特徴で、オーケストラの全体の響きよりも、楽器に個別にマイクを付けて録音したような、個々のパートが分離されて聞こえる音ですが、この曲の場合はそれがプラスに働いて、一つ一つの動きがクリアになり、演奏に凄みが増しています。
 音がピタリと揃っていることに圧倒されながらも、恐れ入って終わるのではなく、聞いていて気分が軽くなってくる明るく楽しい演奏です。(2006/12/23)


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