B.スメタナ 連作交響詩「わが祖国」

指揮ラファエル・クーベリック
演奏バイエルン放送交響楽団
録音1984年5月3・4日
発売日本フォノグラム(ORFEO)
CD番号PHCF-5300(C 115 841 A)


このCDを聴いた感想です。


 クーベリックの「わが祖国」ですから、全体としても素晴らしい演奏なのは言うまでもありません。
 しかし、わたしにとっては、なによりもオーボエソロを聴くための演奏なのです。
 特に、第6曲の「ブラニーク」の、冒頭の激しいテーマが一落ち着きしたところで登場するソロ、時間で言えば2分30秒ぐらい以降の、オーボエのソロの音色の素晴らしさは、何度聴いても痺れます。
 オーボエの音色を蒸留して不純物を取り除き、純粋な部分だけを取り出して結晶化したような透明な音色、それに緩やかなビブラートがかけられることでほんのりと甘みが加わり、それが周りへフワッと広がっていきます。中でも、高音部の音色は、他の人のオーボエでは、どんなに上手いソリストでも、多少なりとも突き刺すような鋭さが残ってしまうものですが、このソロは完全に柔らかく、その音は、キラキラと光りながらそのままどこまでも上空へと昇っていくかのようです。このソロが、一瞬だけでなく、他の楽器と絡みながら2分以上も延々と続くのですから、もうこれほど幸せなことはありません。
 このソロを吹いているソリストについては、以前、R.シュトラウスのオーボエ協奏曲の感想にも書いたことですが、実は最初にこの演奏を聴いた時は、誰が吹いているかなんかまるで意識せず聴き進めていました。そして第6曲まで来た時に度肝を抜かれたのです。
 他の演奏とあまりにも別次元の音に「こ、この素晴らしいソロは一体どこの誰が吹いているんだ?」と思い、いろいろ調べた結果、どうやら当時バイエルン放送響の首席だったマンフレート・クレメントだろうということがわかったのです。
 それからというもの、クレメントの吹いているCDを重点的に買うようになったのは言うまでもありません。
 その後、前述のR.シュトラウスのオーボエ協奏曲を始めとして、多くのクレメントの演奏を耳にして、もちろん、どれも期待に違わぬ素晴らしさでした。
 しかし、それでもこの「わが祖国」のソロは、わたしが聴いたクレメントの演奏の中で、最高のものの一つと数えています。
 クレメントの素晴らしさは、いくら書いても書き足りないぐらいなので、これぐらいにしておき、それ以外について書きましょう。
 全体として最も印象に残った良さは、響きの一体感です。
 これは、バイエルン放送響のアンサンブルの精度の高さと、それからORFEOレーベルのよく響く音響という特質との相乗効果だと思います。
 特に弦楽器において、ヴァイオリンからコントラバスまでが、まるで一つの楽器になったかのように響きが一つにまとまっています。
 たしかに、各楽器ごとの個々の動きの分離はそれほど良くありませんが、その代わり音色は完全に溶け合い、大きく一まとまりとなって響き、動いていきます。
 当然、細部まで表現が統一されているからこそできることで、当時はすでに退任していたとはいえ、クーベリックが長年率いてきたバイエルン放送響だけのことはあります。
 この演奏は、スメタナの没後100年とクーベリックの生誕70年を記念したコンサートのライブであることを考えると、いくら2日間のライブのいいとこ取りとはいえ、よくここまで合っているものです。
 ただ、さすがに、縦の線などは多少乱れている部分もあります。弦全体、管全体では合っていても、弦と管で、弦を基準にすると多少管がテンポの変化についていけなくて後ろに取り残されたり、逆に前につんのめってしまう部分もありました。もちろん、そう目立つところではありませんが。
 逆に、ライブらしく勢いもあります。第5曲の「ターボル」や「ブラニーク」辺りでは、メロディーにアウフタクトの引っ掛けがあるところなどでは、一瞬テンポを止めて溜めをつくり、一気にガッと入って来たりと、ライブらならでは高い緊張感が感じられます。こういう点は、後のチェコ・フィルとのライブに通じるものがありますね。
 このバイエルン放送響とのライブは、最近になってDVDも発売されています。残念ながら未入手ですが、きっと当時の緊張感と、なによりクレメントの雄姿が見られるでしょうから、近いうちに手に入れたいと思っています。(2010/1/23)


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