B.スメタナ 連作交響詩「わが祖国」

指揮ヴァーツラフ・スメターチェク
演奏チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
録音1980年9月8〜12日
販売日本コロンビア(SUPPRAPHON)
CD番号COCQ-85163


このCDを聴いた感想です。


 とても端正な演奏です。
 言い方を変えれば『スタイリッシュ』と言って良いかもしれません。

 音楽の世界、特に演奏に関しての表現で『スタイリッシュ』というと、外面ばっかり整えて中味が伴わない薄っぺらい演奏というように、どちらかというと悪い意味で使われる場合がほとんどなのですが、この演奏の『スタイリッシュ』というのは、決して悪い意味ではありません。
 この『スタイリッシュ』というのは、『無骨』とか『野蛮』といったゴツゴツしたところが無く、非常に滑らかな肌触りを感じさせるような感触があり、細部に至るまで丁寧に仕上げられているという完成度の高さを表しています。

 スメターチェクの演奏は、激しく感情を爆発させたりすることはありませんが、メロディーはよく歌われていて、響きに厚みがあり、聴いていて物足りなく感じることはありません。
 中でも弦楽器は、響きが柔らかく滑らかで、激しい感情も包み込んでくれるような優しさがあります。もちろんこれは、フニャフニャということではありません。芯の強さはあるのですが、それを直接表に出さず響きで包み込んでいるので刺々しくならず、安らかな気持ちで音に耳を傾けることが出来るのです。
 全体的な響きという点では、第5曲目の『ターボル』と第6曲目の『ブラニーク』が一番よく分かります。
 この二つの曲は、『汝ら神の戦士たち』というコラール(第5曲の冒頭のテーマです)が中心になっているのですが、この部分のハーモニーが、あまりにもバランスが良く、さらに濁り無く綺麗に響いているため、まるでオルガンで演奏しているかのように聴こえます。
 特に、フォルティッシモの最強音になっても、叫ぶようなヒステリックな響きにならず、あくまでも綺麗な響きを保っているため、逆に圧倒されるような迫力が感じられます。
 さらに、クレッシェンド、デクレッシェンドの扱いが上手く、移り変わりが滑らかなのに、『確かに今、クレッシェンドしているんだ』という感覚が実感できます。そのため、クレッシェンドする時には、だんだんと興奮して、デクレッシェンドする時は逆にだんだんと気分が落ち着いてくるという、聴き手の感情の変化をより効果的に高めています。

 個々の楽器では、特に目立つのはトランペットです。
 音の輝きが違います。それに存在感があります。
 ……たぶん、これってケイマル氏なんでしょうね。
 もし本当にそうなら、さすが噂に違わぬ実力といったところです。

 ただ、一つだけ気になるのは録音です。
 わたしの気のせいかもしれませんが、強音部になると、レベルが一定以上に強くならないよう調整されているように聴こえます。
 それも、強音部全てというわけではなく、ちゃんとフルに出ている部分もあるように聴こえるため、本当に調整しているのかどうか、今一つ確信が持てないでいますが……(2001/12/28)