B.マルティヌー 九重奏曲

演奏ラーチ響室内合奏団
録音1994年2月28日〜3月4日
カップリングマルティヌー 九重奏曲(断片) 他
発売BIS
CD番号BIS-CD-653


このCDを聴いた感想です。


 この曲をわたしに薦めてくれた友人曰く、マルティヌーはチェコ(及びスロバキア)で四番目に有名な作曲なのだそうです。
 チェコの作曲家というと、まずスメタナとドヴォルジャークの二人が飛び抜けて知られています。
 この二人に次に有名な作曲家となると、知名度は一ランク落ちますが、ヤナーチェクが来るでしょう。
 マルティヌーは、このヤナーチェクの次に知名度が高いという事らしいのですが、良く考えてみると、わたし、その四人以外のチェコの作曲家って、誰一人として知らないのですが(笑)(マーラーは活動の中心がチェコ以外だったので、とりあえず除外しています)
 わたし自身、チェコの作曲家に疎いというのもありますが、知名度で第4位といっても、実はアメリカのメジャーのアメリカンリーグの西地区のようなものだというオチだったわけです(マルティヌー協会及びファンの皆様ゴメンナサイ!)
 でも、個人的には、そういう笑い話があったために、逆に、単にチェコの作曲家というよりも、よっぽど強く印象に残りました。


 さて曲の方ですが、聴いた印象では、変拍子がバリバリに幅を利かせている曲です。
 ところが、楽譜上は、第3楽章以外は、実は2/2とか3/4のような変哲もない拍子が続いていて、5拍子とか7拍子といった変拍子どころか、楽章の途中で拍子が変わる事すら稀なのですが、音楽が頻繁に小節線を跨いでいて、2拍目の裏とかに強拍が来たり、その次の小節では3拍目の裏に強拍が来たりと、音楽の始まる位置が小節毎に全く異なるため、聴いていると、コロコロ拍子が変っているように感じられます。
 このように拍子が複雑に入り組んでいるのに対して、メロディの方は、複雑なリズムが嘘のように馴染みやすい伸び伸びとしたメロディです。
 あたかも民謡を現代に移したような雰囲気で、田舎の風景のような安らぎと哀愁を感じさせながらも、全体的には都会風のスマートでキビキビとした動きで貫かれています。
 泥臭さが無く、いわば、都会の安らぎの地、都市公園のように、自然と機能性が適度に調和しています。

 この曲の中で、わたしが特に好きなのが明るい長調の部分です。
 この曲は、楽章によって長調や短調が固まっているのではなく、楽章の中でも短調と長調が交互に、しかも割とはっきりとした境目をつけて表れます。
 テンポが速い第1・3楽章の場合は、長調の部分に、全てのしがらみから解き放たれたような天真爛漫の明るさが感じられます。
 中でも短調から長調にうつる瞬間は、それまでの短調のちょっと抑えられたような憂鬱さから、急にパーッと華が開いたかのように明るさが大きく広がっていき、心まで軽くなっていくような思いがします。
 一方、第2楽章の場合は、遅い楽章だけに、同じ長調でも第1・3楽章の明るさとは少し異なります。
 第2楽章の長調には、リラックスと安心があります。
 短調部分で感じられる不安や心細さが、長調に入ると、収まるべきものが収まるべき場所に収まったような安心感、そして、温泉の露天風呂に入って遠くの景色を眺めているかのようなリラックスした気持ちになれます。
 どちらの長調も、素直な明るさという点では、共通しています。


 この曲はタイトル通り九重奏ですが、その編成は、木管五重奏+弦楽四重奏と考えて頂ければ、概ね間違いありません。ただ、正確には、木管五重奏はそのままなのですが、弦楽四重奏の方は、2ndヴァイオリンが無く、ヴァイオリンは一名だけで、代わりにコントラバスが入っています。
 つまり、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、フレンチホルン、ヴァイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスが各一名という編成です。
 いわば、小規模のオーケストラの各パートから奏者を一名ずつ引き抜いて来たようなもので、響きは、かなり薄い事を除けば、結構オーケストラに近く聞こえます。

 演奏しているラーチ響室内合奏団は、フィンランドの首都ヘルシンキから100キロぐらい北の都市ラーチにあるラーチ交響楽団のメンバーが中心となったアンサンブルです。
 この演奏は、テンポを幾分速めに取り、スピード感を重視しています。
 途中でのテンポ変化もほとんど行なわず、ほぼ一定のテンポでテンポで通しているため、速いテンポの部分での疾走感は素晴らしいのですが、その反面、音楽がゆったりとする部分では、もう少しテンポを落として、もっと情感豊かに歌い込んで欲しかったとも思いました。(2003/3/8)


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