A.ヴィヴァルディ マンドリン協奏曲 ハ長調 RV425

指揮クラウディオ・シモーネ
独奏マンドリン:ウーゴ・オルランディ
演奏イ・ソリスティ・ヴェネティ
録音1983年6月
カップリングヴィヴァルディ 2つのマンドリンのための協奏曲 ト長調 RV532 他
「ヴィヴァルディ:マンドリン協奏曲集」より
発売ワーナー(ERATO)
CD番号WPCS-10334(2292-45203-2)


このCDを聴いた感想です。


 マンドリンは現在でもよく見かける楽器ですが、オーケストラとの接点はあまり多くありません。
 合奏する場合は、マンドリンはマンドラなどの同属の楽器を中心としてマンドリン・オーケストラを組み、ヴァイオリンや管楽器などの通常のオーケストラとは完全に別系統です。オーケストラとマンドリンが関わるのは、マーラーの「大地の歌」やレスピーギの「ローマの祭り」のような一部の曲でソロとして登場するぐらいでしょう。
 同じようによく普及している楽器なのにオーケストラに加わることが少ないという点では、ギターと同じような扱いです。考えてみれば、ギターもマンドリン・オーケストラにはよく加わっていますし、オーケストラ一家とは別のマンドリン・オーケストラ一家の一員といったところでしょう。
 たしか、ギターがオーケストラに絡みづらい理由の一つに音量の問題があったはずなので、そのギターとオーケストラが組めるマンドリンも、同じようにオーケストラに入るには音量面で厳しかったのかもしれません。いや、勝手な想像ですが。
 今回取り上げるマンドリン協奏曲は、バロック時代のヴィヴァルディの作曲ですから、オーケストラもだいぶ小規模な編成のはずです。そのため、マンドリンが独奏楽器であっても、バランスは問題ないようです。
 といっても、協奏曲を百曲単位で書いたヴィヴァルディでも、マンドリン協奏曲は少なく、わずか3〜4曲ぐらいしかありません。
 その中で2曲は、2台のマンドリンのための協奏曲RV532(これが一番有名らしい)と2台のマンドリンと他いくつもの独奏楽器のための協奏曲RV558であり、どちらも複数のマンドリンのためのものです。また、このCDに収録されている4曲の協奏曲の中でRV93の協奏曲は、もとはリュートのための協奏曲をマンドリンで演奏したもので、1台のマンドリンのための正規の協奏曲は、今回取り上げるRV425のものが唯一のようです。
 さすがに、この曲は最初からマンドリンのために作曲されただけあって、聞いていると、マンドリンの特徴がうまく生かされていることに感心しました。
 まず気が付くのが、長い音符がほとんど出てこないことです。
 マンドリンは張ってある弦の張力が高く、それをはじいて音を出しているため音が残らずすぐに消えます。
 つまり、動きにはキレがあるものの、長い音が出せない楽器なのです。
 もし、長い音が必要な場合は、ヴァイオリン等の刻みと同様にチャカチャカチャカチャカと、同じ音が連続して弾く事(トレモロ奏法といいます)で長い音を出しています。それはそれでマンドリンならでは特徴であり一種の魅力ではあるのですが、この曲の場合は、短い音を連続させて、長い音符を避けています。
 これはテンポの速い第1・3楽章だけでなく、テンポの遅い第2楽章も同じで、ゆっくりした動きでも、短い音を2つ連続させて余韻を残すことで、トレモロ奏法を使わずに動きがつながって聞こえるようにしています。
 一方、速い第1・3楽章は、細かい音符の連続がとても軽快です。しかもマンドリンは弦をはじく撥弦楽器ですから、音がピンピンと弾力的に跳ねて、いっそう生き生きとしています。
 曲の長さは、バロック時代の協奏曲らしく小規模で、全3楽章通しても、演奏時間は10分もかかりません。
 しかし、曲調はとても明るく、短い曲の中に、明るさが凝縮されて太陽みたいに輝いていています。聴いているだけで、楽しくなってくるような曲です。

 さて、演奏ですが、実はシモーネは、この曲を2回録音していて、これは新録音の方です。(独奏者はそれぞれ違います)
 旧録音が60年代〜70年代くらいで、こちらが80年代ですが、わざわざ録音しなおすだけあってか、演奏は大きく違います。
 半分くらい別の曲と言っても良いくらいです。
 その一番の違いは、伴奏にあります。
 旧録音の伴奏の弦楽合奏は、普通に弓で擦って弾いていて、伴奏とソロが交互に登場する一般的な協奏曲風なのに対して、新録音の伴奏は、全て弦をはじくピチカートで演奏しています。一応楽譜には、「伴奏の弦楽器は全てピチカートで演奏しても良い」と書かれているらしいので、その指示を生かしたということみたいです。
 ソロのマンドリンが撥弦楽器なので、表現が統一されるという利点があるのでしょうが、その効果は、聞いていてもそれほどわかりませんでした。それよりも、大きく変わったのは、伴奏がピチカートになることで、万事控えめになり、ソロの立場が非常に強くなったことです。旧録音の伴奏とソロの力関係が50:50とすれば、新録音では、20:80ぐらいで、ソロが常に前に出ています。
 いや、ソロが強くなったというより、伴奏が後ろに下がったという方が近いかもしれません。旧録音が良くも悪くも厚みと広がりがあったのに対して、新録音はソロ中心に小さくまとまっています。その代わり、ソロの表情は細やかで、しかもその細部に至るまでをじっくり堪能することができるのです。
 しかも、ソロのウーゴ・オルランディの音が、また、じっくり聴くのにふさわしく良いのです。
 旧録音の少し太めに音と較べてより細めで、その分透明感があり、キラキラしています。
 さらに、弾ける弾力感も強く、まるで引き締まった体操選手といった感じで、自在に跳びまわっています。
 伴奏を聴くのであればちょっと物足りないでしょうが、マンドリンの魅力を聴くには最適で、しかもソロもそれに見合う素晴らしい演奏だと思います。(2009/5/23)


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