A.ヴォールモレン 「ホップ男爵」第1・2組曲

指揮マティアス・バーメルト
演奏ハーグ・レジデンティ管弦楽団
録音1999年5月25〜28日
カップリングヴォールモレン 2本のオーボエのための協奏曲 他
発売Chandos
CD番号CHAN 9815


このCDを聴いた感想です。


 まずタイトルのホップ男爵とは何者かというと、わたしも詳しいことはよくわからないのですが、どうやら18世紀前半に活躍した貴族のようです。
 この人物がなぜ有名なのかもよくわかりませんが、とにかくこのホップ男爵を中心として18世紀のハーグを舞台とした喜歌劇の計画があり、この曲はもともとその歌劇のために作曲されました。
 ところがその喜歌劇の計画自体が途中でポシャってしまい、しょうがなくそれまで作ってきた曲をまとめたのが、この二つの組曲というわけらしいのです。
 各組曲には4曲ずつ、計8曲ありますが、それぞれ、最初の序曲を除くと、『誰それの○○』といった題名がついていて、おそらく登場人物を象徴する曲ではないかと思います。
 ちなみに、その題名は以下の通り(人物名はわからない人も多かったのでかなり適当な訳です(汗))
    第1組曲
  1. 序曲
  2. ファーゲル(Fagel)のサラバンド(この人物は、当時の宮廷でよく知られた書記だそうです)
  3. キューピッド=シトロン(Cupido-Citron)のポルカ
  4. 州総督の王子(Hereditary Prince-Stadtholder)のマーチ
    第2組曲
  1. 序曲「カロリーナ(Carolina) 万歳」(ウィレム4世王子の娘だそうです)
  2. 王女のメヌエット
  3. ウィレム5世のエア(アリア)
  4. ウォルフェンビュッテル(Wolfenbüttel)のロンド(オランダ陸軍の指揮官にしてウィレム5世の顧問でもあったそうです)
 各曲の長さは、3分から長くても6分丁度くらい。ただ8曲あるので、全曲だと38分ぐらいかかります。

 さて、実際の曲の印象ですが、非常に聴きやすい明快な音楽です。
 なんだか第1組曲はトムスンやカーペンターといった割と通俗的なアメリカ物といった華やかな感じで、第2組曲はロマン派の初期の頃といった感じで、第1組曲よりはちょっと落ち着いているもののメロディーは素直で、それも古典派ほど形に則ったものでもなく、もっと感情をそのままメロディーしたような親しみやすいものです。
 基本的に、全曲通じてカラッと明るく、中では割と暗めに入る第1組2曲目のサラバンドも、陰鬱とか絶望的とかいう雰囲気はなく、どっちかというと静かに優雅という方向のあまり沈まない暗さです。第2組曲に至っては全て長調で、2曲目のメヌエットと3曲目のエアが落ち着いてはいますが、でもやっぱり明るく安らかなのです。
 作曲されたのが1924年と1931年ですから、世紀の境目からは大分経っていますが、世紀末の爛れたり徒花的な雰囲気のちょうど反対で、活力にあふれて、未来は希望で満ちている、という前向きな気持ちがそのまま曲になったかのようです。
 まあ、「人生とは……」と哲学的に考えたり、聴く者を奮い立たせるような英雄的な高揚感などは、ほとんど無いも同然ですが、気楽に音楽を楽しめるので、こういう曲はわたしは結構好きですね。
 もっとも、単純に脳天気なだけの曲ではなく、明快なメロディーやリズムの一部だけが微妙にずらされていたり、突如全く雰囲気が違う荒々しい和音やリズムが入ることもあり、それが明快な部分の陰となって、多くの部分が素直な割に意外と印象付けられます。

 細かい部分でちょっと面白かったのが、第1組第4曲のマーチです。
 この曲は、中間部のトリオにあたる部分のメロディーがオランダ国歌なのですが、オランダ国歌は、以前も書きましたが、4拍子のまま進む曲ではなく、途中でコロコロ変わります。
 そのままではマーチには使えないので、あちこち引っ張ったり伸ばしたりして4拍子に揃えているのです。
 元がほとんど変拍子みたいなものですから、かなり強引に帳尻を合わせたと思える部分がそこかしこにあり「ああ、苦労したんだろうなぁ」と思わずしみじみと感じてしまいました。(2004/12/25)


サイトのTopへ戻る