A.スクリャービン 交響曲第4番<法悦の詩>

指揮マニュエル・ロザンタール
演奏パリ・フィルハーモニー管弦楽団
録音1952年11月
カップリングレフラー 異教徒の詩 他
発売EMI(Capitol)
CD番号CDM 5 66887 2


このCDを聴いた感想です。


 法悦の詩というと、神秘和音をはじめとして独特な響きが特徴ですが、この演奏は録音が少し古く、響きがあまり録りきれていないこともあって、あまり不思議な響きには聞こえません。宙に浮いているような幻想的な雰囲気ではなく、地に足をつけしっかりと踏みしめた、形がはっきりと見える明確な雰囲気があります。
 神秘の影は薄く、鮮やかに輪郭が浮き出ているところといい、むしろ現実主義的な印象を受ける演奏です。
 なにより、神秘的な和音よりも多彩な音色の方に、強い印象を受けました。
 個々の楽器が音色を歩み寄らせて一つの響きを築くのではなく、それぞれの楽器が独自の音色で主張してぶつかりあうことで、次々と響きの色合いが変わっていき、華やかな雰囲気を生み出しています。
 それは音色だけでなく、動きも同様です。
 いつでも自分がメロディーとばかりに、どの動きにも大きく表情を付けて歌いこんでいます。全体がまずあってその中の個という音楽と違い、個が集まって全体になるという作り方ですから、全体での響きのまとまりという点では、それほど一体感は感じられません。
 しかし、代わりに音色の変化による華やかさがありますし、歌いこんでいるだけに動きは生き生きとしています。そのため、動きがいろいろ複雑に絡み合った楽譜ですが、ゴチャゴチャになったりせず、意外なほどクリアに聞き取ることができます。
 どの動きもそれぞれ浮かび上がって聞こえますが、その中でもひときわ目立って聞こえるのはやはり金管、特にトランペットです。
 フランスのオーケストラにしては音色があまり薄くないようですが、ビブラートをしっかりときかせ、全体のそのまた一段上にしっかと君臨しています。もし、どの動きも同じくらいの力関係であれば、自己主張が強いだけに楽器が入れ替わるたびに音楽があっちいったりこっちいったりして、いくらバラエティに富んでいるといってもあまりにもバラバラでリズムやテンポがわけが分からなくなりかねません。そこを、このトランペットが柱となることで、音楽にまとまりが生まれ、リズムやテンポもしっかりと感じることができるようになります。
 神秘性は薄いものの、多彩な音色と表情豊かなメロディーを楽しめる演奏です。

 ところで、演奏しているパリ・フィルハーモニー管弦楽団というオーケストラはこのCDで初めて名前を知りました。
 そもそも、他では全く名前を見かけたことがありません。
 パリにあるのは間違いないと思いますが、パリ音楽院管と別でしょうし、放送局のオーケストラともまた別オーケストラなのでしょう。まさか戦前のパリ交響楽団とつながりがあるとも思えませんし、完全に謎のオーケストラです。
 他に考えられるとすれば、イギリスのナショナル・フィルのように、録音のために臨時編成されたオーケストラという可能性ぐらいでしょうか。
 技術レベルも、演奏を聴く限りは、不安定なところもありませんし、パリ音楽院管と較べてもそれほど遜色なさそうなだけに、よけいに気になります。(2006/12/16)


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