A.リード ロシアン・クリスマス

指揮アルフレッド・リード
演奏東京佼成ウィンドオーケストラ
録音1981年3月25・26日
カップリングリード 吹奏楽のための第二組曲 他
発売佼成出版社 音楽出版室
CD番号KOCD3502


このCDを聴いた感想です。


 作曲者のアルフレッド・リード(1921〜)は、わたしが高校生当時(1980年代後半)、卑しくも吹奏楽をやる人間なら、この作曲者を知らないのはモグリと思われたほど、吹奏楽界で一世を風靡した作曲家です(現在はどうだかわかりませんが……)
 このロシアン・クリスマスという曲は、1944年の作曲ですから、リードの作品の中でも、最初期の作品です。
 しかし、その完成度の高さは、とても若い頃の作品とは思えないほどです。

 この曲の特徴の一つとして、楽器ごとの音色の変化を楽しむようなソロが少ないことがあります。
 デンヴァー市(デンヴァー市からの依頼だった)のロシア系教会から借りたコラール集がモチーフになっていることもあり、全編コラール風の重厚な和音による展開が多くなっています。
 オーケストレーションもシンフォニックな重厚なため、管弦楽にアレンジしても上手くいきそうな感じがします。
 先ほど、ソロが少ないと書きましたが、唯一例外の楽器があります。
 それはイングリッシュ・ホルンです。
 中間部分で、延々とソロがあり、この部分だけは他の楽器は全くなくなり、哀愁を帯びたメロディーだけの世界になります。
 このソロ部分があることで、コラール部分が引き立ち、またソロ自体も活きてくるのです。
 また、ソロではないのですが、楽器の音色が上手く活かされている部分もあります。
 吹奏楽の編成の中で、唯一の弦楽器としてコントラバスが入っています。
 ただ、通常の演奏では、チューバと同じ動きをする場合が多く、目立つことはあまりありません。
 しかし、この曲では、部分的にコントラバスにピチカートをさせることで、チューバにない軽快感と木目のような暖かさを効果的に出しています。

 この曲のもう一つの特徴は編成の大きさです。
 吹奏楽の曲自体、オーケストラと比較して、編成が大きい場合が多いのですが、この曲はその中でも大規模な方だと思います。
 フルート、ファゴットが2管なのはまだいいのですが、フルートは4管、クラリネットはメインですから1st、2nd、3rdは基本としてEs、Alto、Bassが入り、サックスもアルト、テナー、バリトン、バスと揃っています。
 金管に至っては、ホルンが4本なのは普通なのですが、トランペット(コルネット含む)7本、トロンボーン4本、それにプラスしてユーフォニウム、チューバ、コントラバスが入るといった按配です。
 パーカッションについては、もう全部は書ききれませんが、ティンパニーを別として9個楽器を使うと書けば、その多さがわかって頂けると思います。
 この編成でコラールを演奏するのですから、それはもう凄い迫力というものです。
 実は、わたし、この曲を高校時代に吹奏楽コンクールで演奏したことがあるのですが、吹奏楽コンクールというのは出演できる人数が50人までと決まっているのです(高校生以下のみ)。
 吹奏楽の木管楽器というものは、オーケストラと異なり、1パートを一人だけで吹くことは、まずありません。たいてい2〜3人、クラリネットはオーケストラのヴァイオリンにあたりますので、1パートあたりの人数は、当然もっと多くなります。
 ………この編成でどうやって、50人に収めろと言うのでしょうか(笑)
 もちろん、編成から外れてしまった楽器がたくさん出たのは言うまでのないことです。
 ……ちなみに、あれだけソロがあると書いたイングリッシュ・ホルンは、ソロごとカットされてしまいました(笑)

 この曲で、わたしがもっとも好きなところは盛り上がり方です。
 和音の積み重ねでじわじわ盛り上がっていくところは、何となくブルックナーを彷彿させるところがありますが、大きく異なっていることが一点あります。
 ブルックナーに限らず、普通、曲の盛り上がった頂点に至ったときは、「ああっ、ついに登りつめて来たんだ!」という気になります。達成感というか、ある種、終焉についたような感じです。
 ブルックナーのように頂点がいくつもある曲でも、一つの頂点についたらとりあえず一旦下にちょっと降りてから、次の頂点に向かうことになります。盛り上がりの効果ということを考えると至極当然の話でしょう。
 ところが、このロシアン・クリスマスでは、最後の頂点についた時、辿り着いたという気にはなりません。むしろ、そこから新しく何かが生まれてくるという、感じがしてきます。
 わたしがこういう印象を受けた曲は他にはありません。
 また、それは頂点ではないのではないかと思われるかもしれません。しかし、曲の流れからすると、確かにそこは頂上なのです。イメージ的には、山の頂上から天に向かって、真っ白な階段が伸びているような感じなのです。
 そして、わたしはその部分が一番好きなのです。

 わたしは、この曲がとても好きです。
 好きな曲を10曲挙げろと言われたら、入ってくるかもしれません
 ただ一番の問題は………このCD以外、全くCDが無いことでしょうね〜(笑)
 どこかで録音してくれないものでしょうかね。(2001/1/19)


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