A.ボロディン 交響詩「中央アジアの草原にて」

指揮アンドレ・クリュイタンス
演奏フィルハーモニア管弦楽団
録音1958年11月18・19日
カップリングムソルグスキー 交響詩「はげ山の一夜」 他
発売EMI
CD番号CDM 7 69110 2


このCDを聴いた感想です。


 よく『音画』と形容される曲ですが、この演奏はまさに『絵』という雰囲気がします。
 他の演奏に較べて情景がリアルに思い浮かぶとかそういった意味ではありません。
 動きが抑えられ、とても静かなのです。
 他の演奏が、画は画でも動画で、メロディーにしても常に動きが感じられるのに対して、この演奏は静止画、動きがあっても連続した静止画といった感じで、一枚一枚の絵はピタッと止まっています。
 中間部のフォルティッシモの部分を除けば、常に静かで穏やかです。
 ただ、静かで止まっているといっても、音楽が死んでいるという意味ではありません。
 額縁に入れられて壁にかけてある絵画は、たしかに全く動いたりしません。しかし、そこからは非常に豊かな情感を感じられるように、この演奏も、静かな世界でありながら、そこには遠くまで広がる平原と穏やかな日差し、そこをゆっくりと進んでいく隊商といった風景がありありと浮かんできます。いや、あまりにも穏やかで平和な世界で、逆に現実では到底ありえない夢か幻のように思えてくるぐらいです。
 二つのロシアとアジアのメロディーも、ロシアの、力をまるでいれずにサラッと流しながら軽く空中にフワッと浮かび上がってくる歌い方もいいのですが、アジアの、ほんのちょっとだけ力を入れて重みを持たせながら全体としては一筆書きで書いたみたいにサッと流した歌い方が印象に残りました。他の演奏では情感を込めて歌うのは良いのですが、どうしても哀愁を前面に出すぎてしつこくなりがちなのに対して、この演奏ではほんのりとした暖かさの中に哀愁が漂っていて、むしろこの方が深く染み入ってきます。
 指揮はパリ音楽院管の最後の指揮者として有名なクリュイタンスですが、この演奏のオーケストラはイギリスのフィルハーモニア管です。さすがにパリ音楽院管よりもしっかりとまとまっています。曲を通じて穏やかで平和な雰囲気を保てているのもフィルハーモニア管だからなのでしょう。おそらくパリ音楽院管だったらソロが登場するたびころころ雰囲気が変わってしまっていたのではないでしょうか。
 といっても、中間部のフォルティッシモの部分の音色なんかは、明るく薄い響きで、フィルハーモニア管ではなく、パリ音楽院管が出しているような響きです。こういう辺りは、まあクリュイタンスらしさなのでしょう。(2006/2/26)


サイトのTopへ戻る