A.P.ボロディン 歌劇「イーゴリ公」より「だったん人の踊り」

指揮ルイ・フレモー
演奏モンテ=カルロ国立歌劇場管弦楽団
録音1963年
カップリングハチャトゥリアン バレエ音楽「ガイーヌ」より抜粋 他
発売ユニバーサル ミュージック
CD番号POCG-91032


このCDを聴いた感想です。


 この演奏で、まず最初に強い印象を受けるのは『音色』です。

 そして、この音色は、『凄い』の一言です。

 なにしろ、今時これほど平べったい音色にはそうそうお目にかかれるものではありません。
 パリ音楽院管もなかなかのものでしたが、このモンテ=カルロ国立歌劇場管はそれに輪をかけています。
 この薄っぺらい音色は、おそらく聴く人によって大きく好みが分かれるところで、誰もが納得するドイツ系の音と違い、激しく拒否反応を示す人がいても全く不思議ではありません。
 ……いや、わたしは好きですけど。はい(笑)
 この手の音色は、表情を激しくつけられるのが特長で、1/4音はズレてるんじゃなかろうかと思えるような幅の広いビブラート組み合わされることで、聴いてる方が恥ずかしくなってくるぐらいベッタベタに歌うことが出来ます。
 この曲でも、その特長は遺憾なく発揮されていて、特に最初の方のゆったりとした部分などは、「だったん人の踊り」というより、「サロメ」か何かの官能的な踊りじゃないかという気さえしてきます。
 さらに金管なんかは、薄い音の癖に強烈な輝きを放っているため、フォルテで音を伸ばされると脳天に直接音が突き刺さってくるような凄い刺激があります。
 こういう音色は、現在では本場のフランスでさえあまり聴くことが出来なくなった音色で、もしかしたら国際的に名が知られているオーケストラよりも草の根レベルの地元に密着した団体の方が、却ってこういう音色を保っているのかもしれません。
 ということは、ましてや日本ではまず聴くことが出来ない音色です。
 おそらくそんな音色で吹いていたら先生に一発で矯正されるでしょう。
 ……というか、もしわたしが先生でも矯正させます。日本のどこのオーケストラに行っても、こんな音色で吹いていた日には、オーケストラから浮き上がること間違い無しですから。

 ところで、どうしても音色の方に目が行きがちなのですが、実は、アンサンブル自体はなかなか揃っています。
 各奏者の技術は結構高いですし、自由奔放な音色で吹いている割には、ダイナミクスはキチンと揃っていて演奏に統一感があります。
 この点からも指揮者のルイ・フレモーの統率力の高さが伺えるのですが、このルイ・フレモー、名前はあまり知られていませんが、実はバーミンガム市響でサイモン・ラトルの前任者だったのです。
 なにせ、後任があのラトルだったため、存在が霞んでしまいましたが、バーミンガム市響もラトルになってから突然変異的に上手くなった訳ではなく、既にフレモーの時代から、ある程度能力は高くなっていたらしいのです。
 ただ、あまり録音が行なわれなかった関係で、国際的に知られる事が無かったとのこと。
 なんだか、セントルイス響におけるウォルター・ススキンドみたいな立場です。

 そういえばこの曲には、他の演奏では見たことのない変なカットがあります。
 それは冒頭部分で、いきなり頭がカットされていて、曲が第15小節目のオーボエのソロから始まります。
 冒頭に演奏されることが多い「ダッタンの娘の踊り」をカットすることはよくありますが、それ以上にカットした演奏というのは初めて見ました。
 なんだかズボンをはいてみたら裾が10センチ短かったみたいで、聴いていてかなり違和感があります。(2001/11/2)


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