A.マルチェッロ オーボエ協奏曲 ハ短調

独奏オーボエ:ジャン=クロード・マルゴワール
演奏ル・フロリレギウム・ムジクム・ドゥ・パリ
録音1974年頃
カップリングアルビノーニ オーボエ協奏曲 他
「イタリア・バロック協奏曲集」の一部
発売ソニー
CD番号SRCR 8894


このCDを聴いた感想です。


 このオーボエ協奏曲は、後に大バッハによってチェンバロ曲(BWV974)に編曲されたり、なにより、第2楽章が映画「ヴェニスの愛」のテーマに使われたこともあって、マルチェッロの作品の中では最も有名なものの一つです。
 たしかに第2楽章は、メロディーといい、ゆっくりと刻んでいく伴奏といい、アルビノーニのアダージョを聴いた時と同じような哀愁に満ちています。
 しかし、第1楽章と第3楽章も、第2楽章とはまた異なる哀愁があります。
 第2楽章が、ゆっくりとしたテンポでじわじわと哀愁が押し寄せてくるのに対して、第1楽章は、アレグロ・モデラートの中庸のテンポで、滑るようにするすると進みながら、サラッと哀愁を残していきます。むせ返るほど匂わせるのではなく、速いスピードで通り過ぎて、少し蒸留したような透明感のある哀愁を、残り香のようにフワッと漂わせています。
 第3楽章は、第1楽章よりさらに速く、第1楽章が滑るように進んで行くのに対して、第3楽章は跳ねるようなリズム感があり、動きがある分だけ、感情が直に表れた哀愁が感じられます。第2楽章のじわじわ来るのともまた違い、ストレートに感情をぶつけてきたようなイメージです。
 こういった楽章ごとのカラーは、楽章全体にわたっています。逆に言えば、楽章の中では、後の時代の曲のように途中で雰囲気が大きく変わったりすることはありません。一つ楽章が同じ雰囲気というと飽きて来そうなものですが、各楽章とも3分強で、合計しても10分強と短い曲ですから、一点に特徴が集中している方が聞きやすく印象にも残りやすいと思います。
 演奏しているマルゴワールは、わたしはメサイアなどで指揮者としてのイメージが先にあり、オーボエ奏者だということは、このCDで初めて知ったくらいです。
 音色は、フランスらしい明るく色彩豊かなものです。一音一音明確な輪郭をつけたはっきりした音で、動きもキビキビとしているため、哀愁よりも華やかさが感じられます。もちろん哀愁が無いわけではなく、哀愁もありながら、哀愁一本槍で押すのではなく、生き生きとした動きで活気を加えています。
 演奏しているル・フロリレギウム・ムジクム・ドゥ・パリ(Le Florilegium Musicum de Paris)は、王室大厩舎王宮付楽団(La Grande Ecurie et La Chambre du Roy)と同様、マルゴワールが主宰する団体らしいのですが、詳細はよくわかりません。演奏を聞く限りでは1パート一人か二人のかなり小規模なアンサンブルではないかと思います。
 録音の状態もあるのでしょうが、各楽器に一つずつマイクをつけたみたいに楽器間の分離が良く、各パートの動きが手に取るようによくわかります。その分、響きとしてのまとまりは少し薄いようですが、もともと少人数ですし、それほど気にはなりませんでした。
 演奏の方も、オーボエ・ソロに合わせたキレの良いもので、スピード感があります。パートの動きがはっきりと聞き取れることもあって、ただ伴奏に徹するのではなくなかなか自己主張を強くしているように聞こえるのですが、オーボエ・ソロ自体、かなり華やかな方なので、ソロが埋没してしまうことは全く無く、むしろオーボエが目立つ室内楽といった感じで、バランスとしてはちょうど良いところです。(2008/1/5)


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