A.ドヴォルジャーク 交響曲第8番 ト長調

指揮コリン・デイヴィス
演奏ロンドン交響楽団
録音1999年10月5日
発売LSO
CD番号LSO 0002 CD


このCDを聴いた感想です。


 この曲は、愛称が「イギリス」と付けられているだけあって、いかにもイギリス風の雰囲気があり、イギリスの指揮者でイギリスのオーケストラであるこの演奏はまさに正統派……なわけがありません(笑)
 愛称の「イギリス」は、その前の第7番までの楽譜を出版していたジムロック社(たしかドイツ)との契約がこじれてしまい、この第8番の楽譜だけイギリスのノヴェロ社から出版されたためにそう呼ばれるようになっただけで、曲の内容とは全く無関係です。
 曲の雰囲気はイギリスというよりもむしろ哀愁漂うボヘミアの民族的特徴の方が強く表れていると思います。
 この「イギリス」という愛称は、ハイドンの弦楽四重奏第61番の「剃刀」と並んで、内容とは縁もゆかりも無い愛称の双璧ではないでしょうかね。
 もっとも、さすがに最近はこの愛称で呼ぶことは少なくなってきたようですが。

 さて演奏の方は、冒頭で書いたようにイギリスの指揮者イギリスのオーケストラで揃えただけあって、愛称とはまるで正反対にボヘミアの民族臭で溢れまくったこの曲を、ほとんどボヘミアの雰囲気を感じさせない演奏に仕上げています。
 といって、その分イギリス風の演奏になっているかいうと、それもちょっと違うような気もします。
 少なくとも、イギリスと言われてわたしが思い浮かべる「中庸」「小さくまとまった」というイメージからは遠く離れています。
 スケールとしてはそれほど大きくは無いのですが、とにかく細かい部分でのこだわりを感じました。
 第1楽章冒頭や第2楽章冒頭のようなメロディーなどでは、音の一つ一つに至るまで強弱やテンポの微妙な伸び縮みに至るまで細かく計算されていて、それを全体として聴いた時に表情濃く歌い込まれたメロディーになるよう演奏されています。
 民族的な感覚ではなく計算されている分、いかにもな土着系のメロディーでしかも歌いこまれているにもかかわらず、あまり哀愁は感じられません。
 しかし、哀愁が無いため、逆に、聴き慣れたメロディーから思いがけないほど新鮮な明るさを感じました。
 ドヴォルジャークの曲、特にこの第8番はどうしても聴く時にボヘミア的な雰囲気ばかりに目が奪われていましたが、そういう哀愁とかが無いこの演奏により、改めてメロディーの良さに気がつきました。
 なかでもボヘミア的な陰りを持つメインのメロディーに対する対旋律。
 この辺りはC.デイヴィスの上手さでもあるのかもしれませんが、どちらかというと主旋律に比べて哀愁の薄い対旋律は、本当に明るく楽しげな雰囲気に溢れています。
 第1楽章の中間辺りに登場する木管のスタッカートで上がり下がりする対旋律などは、日光が燦々と降り注ぐ高原で小鳥が跳ね回っているみたいで、とても幸せな気分になってきます。
 ライブ録音という事もあって、少し粗い部分も無くは無いのですが、気になるほどではなく、同じC.デイヴィスのコンセルトヘボウ管とのスタジオ録音より、細部まで作りこまれていながらライブならではの勢いのある華やかな演奏になっています。
 ついでに、もう一点気に入った部分を。
 第3楽章のコーダ(テンポが速くなる部分)で、いったんフォルテでメロディーが演奏された後、もう一度同じメロディーが弦楽器によりピアノで演奏されるのですが、このメロディーの途中でクラリネットらしきグリッサンドが入ります(楽譜ではクラリネットは完全に休みですがわたしにはクラリネットに聞こえました)。
 このちょこっと入るグリッサンドが非常に可愛く、これだけでこの演奏に対するわたしの評価は2段階は確実にアップしています(笑)(2004/8/21)


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