A.ドヴォルジャーク スラヴ舞曲第1番・第2番(第1集より)

指揮コンスタンティン・シルヴェストリ
演奏パリ音楽院管弦楽団
録音1963年頃
カップリングフンパーディンク 歌劇「ヘンゼルとグレーテル」序曲 他
CONSTANTIN SILVESTRI The Collection の一部
発売Disky
CD番号DB 707432


このCDを聴いた感想です。


 この演奏を聴いた時、一瞬耳を疑いました。

「こ、この演奏本当にプロなのか?」

 演奏のミスした部分に注目するという聴き方は本当は良くないのでしょうが、この演奏はあまりにも強烈だったため、他の部分の印象を消し去ってしまい、こればっかり印象に残ってしまいました。
 わたしに、そこまで強烈な印象を与えたパート……それはシンバルです。
 スラヴ舞曲第1番は、フリアントと呼ばれる1小節目の1拍目と3拍目、2小節目の2拍目にアクセントがある、2小節を一単位とした3/2拍子ような速い3拍子の曲で、フリアントの代表的な例として第8番と共に必ずといって良いほどあげられる曲です。
 シンバルもフリアントの型通り、1拍目、3拍目、2拍目、1拍目……と繰り返しており、確かに小節の頭で無いためちょっと取りにくいとは思います。
 しかし、小節の頭では無いとはいえ、2拍おきという一定の間隔であり、プロの演奏でずれている演奏というのは全く聞いた事がありません。
 ところが、この演奏のシンバルは……思いっきりずれています。
 それも全部少しづつ遅れているとかいうのであれば、「マイクの位置からちょっと遠かったのかな?」とか好意的な解釈も思いっきり無理すればできなくも無いのですが、このシンバル、小節の頭に入る時はまだ良いのですが、3拍目に入る時に必ず遅れるのです。
 もし、この演奏がメンゲルベルクみたいにテンポに伸び縮みがあるとすれば、「やっぱり、テンポが一定じゃないと合わせるのは難しいんだなぁ」と、これもかなり無理すれば好意的解釈もできなくは無いのですが、テンポはメトロノームのごとく一定です。
 要するにこのシンバル奏者、一定の間隔で叩くことができないのです。
 しかも、すごいのはこれだけではありません。
 この曲は、一つのフレーズを繰り返し記号で計2回繰り返すことが多いのですが、冒頭のジャーンという伸ばしの音は別として、その次から始まるフリアントのリズムのテーマも楽譜に当然のごとく繰り返しの指示があり、この繰り返しをしない演奏というのはまずありません。
 ところがこのシンバル奏者は信じられないことに繰り返しをすっかり忘れています。
 繰り返した後2小節目の頭(本当はこんなところに音符はありません)に思い出したように慌てて叩き始めます。
 もう、アマチュアでも滅多に見られないようなスーパープレイです。
 さらにこの話の怖いところは、これだけいろいろやらかしてるこの演奏、驚くべきことになんとスタジオ録音なんです。ライブ録音じゃないんですよ?
 しかしまあ、指揮者のシルヴェストリやプロデューサーやディレクターは何を考えているんでしょうか。これだけ酷いミスがあれば、普通は録り直しするものじゃないんですかねぇ?

 それはそうと、この点を別とすれば演奏自体は、スピード感があるなかなかいい演奏です。
 第1番の方は、弦の音が多少薄いように感じられますが、軽やかで弾むような楽しさがあります。また、管楽器がパリ音楽院らしく明るく華やかです。
 第2番は、中間部の華やかな部分は第1番と同じような軽やかさがあり、冒頭の短調の部分は、メロディーをよく歌わせて、哀愁をたっぷり出しています。

 それにしても、このシンバル奏者、ここまでやってくれると逆に興味が湧いてきます。
 もしパリ音楽院のメンバー表があったら、この人だけチェックしてしまいそうです。
 しかも終いには、パリ音楽院の他の演奏も、まずこの人がいるかどうかチェックして、いないと何となくガッカリする、ということがありそうでなんだか怖いです(笑)
 そういえば、シルヴェストリの前回の感想にもトライアングルのリズム感が凄いと書きましたが、もしかして同じ人ではないかしらん?

 なんだか、シルヴェストリの演奏について書いた演奏は、みんな素晴らしい奏者の話がメインになってしまいましたが、もちろんこういう演奏よりまともな演奏の方が遥かに多くあるということだけは、皆さん信じてくださいね(笑)(2001/8/17)


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