A.ブルックナー 交響曲第9番 ニ短調

指揮オイゲン・ヨッフム
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音1964年12月1〜5日
発売Grammophon
CD番号429 079-2


このCDを聴いた感想です。


 ベルリン・フィルとバイエルン放送響を指揮した全集の中からの1枚です。
 この全集は1960年代の録音ですが、ヨッフムは後の1970年代にドレスデン国立歌劇場管ともう一度全集を録音しています。
 二つの全集は、例えば第2番は旧全集の方が良かったり、逆に第7番は新全集の方が良かったりと、曲によって新旧どちらがより良いかははっきりしています(もちろん、あくまでもわたしの好みでの話ですが)。
 しかし、その中で第9番だけは優劣つけられませんでした。
 優劣つけがたいといってもどちらも同じような演奏ではなく、それぞれに違った良さがあります。
 以前、ドレスデン国立歌劇場管との第9番の感想でも書きましたが、新録音の方は響きが暖かく、テンポの変化も無理なく自然になり、大きく全体として見た時に良さが表れます。
 それに対して、この旧録音の方はテンポの動きが激しく、音楽を積極的に引っ張っているという面はあるものの、全体を見ると、自然で落ち着いた新録音に較べ、やや落ち着き無く、気持ちばかりが急いているような雰囲気がします。
 その代わり、部分で見た時には、旧録音は新録音を大きく上回る魅力がそこかしこから感じられます。
 なかでも、オーケストラが当時カラヤンの下で最『強』を誇っていたベルリン・フィルという点が、大きなアドバンテージです。
 アンサンブルはほぼ完璧に近く、コラールなども澄んだ響きでほとんど濁りがありません。これはドレスデン国立歌劇場の木目のような暖かさとは正反対の金属的な冷たい音色の利点を生かしたもので、響きはより厳しくなり、緊張感も高まっています。
 個々のプレイヤーのレベルも高く、第1楽章の途中(第153小節)で登場するオーボエのAsから途中でEsを経由してゆったりとオクターブ上のAsに上がり、またEsを経由してオクターブ下のAsに降りてくる静かなソロなどは、その深い音色と抑揚を抑えながらもしみじみとした歌い方に圧倒されました。他の演奏のどのソロよりももっとも忘れ難いソロです。
 また、第1楽章の最後に出てくる、トランペットがポーンと一段高く上がってずっと伸ばしている音色もこの演奏ならではものです。
 他の響きから一つ抜け出て存在感がありながら、澄んだ音で全く力んでいません。どこまでも高く抜けていくような音で、それこそ俗世間から一歩高みへと上った音という印象を受けました。
 曲全体としてはたしかにドレスデン国立歌劇場管の方が上で、わたしもどちらかというとそちらの方をよく聴きますが、旧録音のこういった部分的な良さは新録音を含めた他の演奏と較べて頭一つどころか二つ分くらい抜け出ていて、この演奏だけの他には変えがたい魅力なのです。
 ヨッフムの第9番は二つの全集以外にも単発でいくつかCDが発売されていますが、残念ながらまだ聴いていません。全集の二つから考えると単発の演奏も期待できるので、早めに手に入れたいところです。(2005/10/29)


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