指揮 | コリン・デイヴィス |
演奏 | ロンドン交響楽団 |
録音 | 2002年2月22〜24日 |
発売 | LSO |
CD番号 | LSO0023 |
えーと……コリン・デイヴィスって、芸風が変わったんでしょうかね? この演奏だけかもしれませんが、妙に細部にこだわりをみせています。 それが最も顕著に表れているのが第1楽章です。 個々のメロディーをじっくり歌い上げるのみならず、そのメロディーの中の一つの音毎にこれでもかと歌いこんでいきます。 この音はこの響かせ方が相応しい、その次の音はこう歌わせると最も良く響く、といった具合に、次の音へ移る度に、念を押したように、改めて注意深く音を出させています。 そうすることで、個々の音は、それぞれ、これ以上は無いというくらい密度が濃い音なのですが、その代償として、横の流れは大きく犠牲になっています。 いやもう、『自然』という言葉を、これほど遠くに感じた演奏は初めてです。 メロディーの流れが、自然とか不自然とか考える前に、たしかに音は楽譜通りなのにもかかわらず、メロディーが、まるでメロディーではないように思えてきます。 メロディーというのは、だいたいは、前の音からつながりを持って次の音に進んでいく事の繰り返しで、一つの大きな形を作っていくものですが、この演奏では、それがほとんど感じられません。 個々の音がそれぞれ独立していて、前の音とは全く何のかかわりも無く登場し、その次の音の音とも、また全く関係が無いかのようです。 しかも、それだけメロディーがバラバラになっていながら、単に変な演奏やつまらない演奏に終っていないのは、それを補うだけの、個々の音に対するこだわりが感じられるからです。 まるで、熟練の職人が精魂込めて仕上たように、音の一つ一つに力が込めれていて、個々の音が独自の世界を築いています。 さらには、曲全体も、その世界が積み重なっていく事で、曲として成り立っているかのように思えてくるほどです。 ただ、今まで抱いてきた、ブルックナーのイメージ、コリン・デイヴィスのイメージとは、全くかけ離れていて、最初にこの演奏を聴いた瞬間に、そのあまりにも異様な雰囲気に、圧倒されました。(2003/5/10) |