A.ブルックナー 交響曲第8番 ハ短調
(ハース版)

指揮ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー
演奏ソヴィエト国立文化省交響楽団
録音1984年4月8日
発売YEDANG
CD番号YCC-0047


このCDを聴いた感想です。


 相変わらず、上手いんだか下手なんだかよくわからないオーケストラです。
 音の弾き間違い吹き間違いについては、ここほど多いオーケストラは他に見たことがありません。
 半音間違えて演奏したりといったミスは、もう気にしていたらキリが無いほどそこかしこにあり、さらに酷いものでは、非常に目立つ金管の和音等で、たった一人しか演奏していない音を間違えたために、全然違う和音になってしまう事すらよくあります。
 たしかに、完全なライブ録音のようですから、ミスをしても録り直しができるスタジオ録音と違って厳しい条件ではあるのですが、その点を考慮してもあまりにも酷すぎます。
 上手いアマチュアオーケストラの方が、よほどミスする回数は少ないのではないかと思います。
 というように、これだけミスを連発するのですから、このオーケストラはどうしようもないほど下手なオーケストラなのか、というと実はそうでもないのです。
 例えば、表現力の高さは、とてもアマチュアオーケストラが太刀打ちできるようなものではありません。
 ピアニッシモからフォルティッシモのダイナミクスの幅からして、囁くような小ささから周りを圧倒するような大きさまで非常に幅広いのに、それに加えて硬軟の使い分けが上手さがあります。
 ソヴィエト国立文化省響というと、わたしなんかは硬いフォルテのイメージがどうしても強いのですが、弦楽器のみで演奏されるゆったりとしたメロディーなんかは、ピアノかフォルテかを問わず、柔らかくよく歌い込まれていて、それがフォルテの場合には、さらに大河のような幅広い蕩々とした流れが感じられます。
 また、いくら各プレイヤーが音を間違える事があっても、合奏力自体はレベルが高く、ハーモニーや縦の線には狂いはありません。
 さらに、ソヴィエト国立文化省響の一番の魅力であるメタリックな金管群があります。(これは文化省響の特徴というよりロシアのオーケストラの特徴かもしれませんが(笑))
 軍隊の信号ラッパの如く、木管弦楽器の分厚いハーモニーの壁を突き破って直接脳天に響くトランペットのビリビリした音色。
 弦楽器と融け合おうという意志の全く見られない、他者を拒絶した響き。
 特に、ホルンやトロンボーンによってつくられる、フォルティッシモの圧倒されるような分厚い響きは、思わず故事(?)になぞらえて『鉄のカーテン』と呼びたくなってくるほどです(笑)
 あっ、ちなみに、全てを遮断する『鉄のカーテン』ですが、唯一トランペットだけは、それをものともせずに、突き抜けてきますので(笑)
 わたしなんか、ロジェストヴェンスキーとソヴィエト国立文化省響のブルックナーを買う目的の半分以上は、この金管群を聴きたいがためなんですから。
 しかし、この演奏は、おそらく世のブルックナー好きの方々には非常に受けが悪いと思います。
 演奏のスケールは大きいのですが、通常の管絃一体となった包み込むような暖かい響きではなくビリビリした冷たい金属的な響きですし、流れも恣意的で自然体でもありませんし、おまけに音のミスもあきれるぐらい多い……
 これで人気があったら、そちらの方が驚きます(笑)
 ただ、わたし自身は、こういう演奏は大好きです。

 ついでに版についてですが、名目上はハース版となっていますが、第4楽章では本来は第2楽章にしかないはずのシンバルまで入っていたりと(479小節目)、若干改訂版からも取り入れているようです。(2002/10/25)


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