A.ブルックナー 交響曲第7番 ホ長調

指揮クルト・ザンデルリング
演奏シュトゥットガルト放送交響楽団
録音1999年12月
発売hänssler
CD番号CD 93.027


このCDを聴いた感想です。


 楽譜をそのまま音にした演奏とは、こういう演奏を言うのかもしれません。

 オーケストラが完全に曲と一体化しています。
 曲を聴いている時、特によく知っている曲を聴いていると、よくメロディーの歌わせ方とかソロの音色とかテンポとかそういう点に注意が向くものです。
 例えば、『このテンポは上手い。曲によく合ったテンポで心地良いな』とか思うわけです。
 ところが、この演奏は、そういった細かい部分よりも先に全体の雰囲気が強く印象付けられました。
 ただそこに和音があるとか、メロディーがあるという事ではなく、全てが一体になって、『ブルックナー交響曲第7番』という世界があたかも目の前にあるかのように見せてくれるのです。
 しかも、それは曲を最後まで通して聴いて、初めて『ブルックナー第7番とはこういう曲なんだ』とわかるのではありません。
 一つの和音、一つのメロディーといった、ちょっとした一瞬にも、雰囲気が出ているのです。
 もちろん、和音が変われば、当然雰囲気も変わります。メロディーもいくつも出てきます。
 しかし、どう雰囲気が変わろうとも、それはあくまでもブルックナー第7番なのです。
 例えば、万年筆は、上から見ようが横から見ようが後ろから見ようが万年筆以外何物でも無いのと同様に、この演奏のどの瞬間からも『これはブルックナー第7番の世界だ』という印象を受けるのです。

 実際、細かい部分に注目すれば、それほど変わったことをしているわけではありません。
 テンポも少し遅めですが、目立って遅いというほどではありませんし、メロディーにしても、スケール大きく朗々と歌わせているというわけでもありません。
 ところが、それらが全てピタリと収まっているため、全体としては、他の演奏には無い世界が現れているのです。
 なんとも不思議な感覚です。

 これらを支えているのが、ザンデルリングの統率力と、シュトゥットガルト放送響の高い合奏能力にあるのは間違いないでしょう。
 特に、シュトゥットガルト放送響のハーモニーの精度の高さには驚かされました。
 上記の雰囲気というものは、ハーモニーが少しでも濁ると、一瞬にして壊れかねないものなのに、このオーケストラは非常に安定していて、安心して聴いていられるのです。
『シュトゥットガルト放送響は、録音こそ少ないものの、レベルは高い』という噂は耳にしていたのですが、まさかこれほどまでとは思いませんでした。非常に嬉しい誤算です。(2002/4/5)


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