A.ブルックナー 交響曲第7番 ホ長調

指揮コリン・デイヴィス
演奏バイエルン放送交響楽団
録音1987年5月1日
発売ORFEO
CD番号C 208 891 A


このCDを聴いた感想です。


『コリン・デイヴィスの演奏の特徴は中庸』と言われる事がありますが、この演奏も中庸という言葉が良く似合う演奏です。

 スケールが飛びぬけて巨大なわけでもなければ、かといって意識的にスケール感を無くした演奏でもない。
 極端にテンポが速かったり遅かったりしているわけでもなければ、個性的なテンポ変化をしているわけでもない。
 キレがいいリズムでもなければ、重厚などっしりとしたリズムでもない
 メロディーを濃厚に歌っているわけでもなければ、極力歌うことを抑えた演奏でもない。

 そう、要するに『普通』なんです。
 この演奏を聴いて、『全てが中途半端』とか『個性が無い』と感じる人がいても全く不思議ではありません。
 実際、わたしもコリン・デイヴィスの他の演奏を聴いて、そう思うこともよくあります。

 しかし、この演奏には、『普通』だからこそ得られるバランスの良さと安定感が感じられます。
 このバランスの良さと安定感はあまりにも心地よいため、「スケールの大きさやエキセントリックな感覚は何もいらない!」と思わせるほどで、この演奏ほど極端でないことを感謝した演奏というのもなかなかありません。
 さらに、この心地よさの大きな要因にバイエルン放送響の合奏能力の高さがあります。
 わたしは80年代に入ってからのバイエルン放送響のレヴェルは世界でもトップクラスだと思っているのですが、この演奏でもその実力は遺憾なく発揮されています。
 特に澄んだハーモニーは素晴らしく、これがもし無かったならこの演奏もここまで心地よくは成らなかったと思います。

 今までこの演奏のことをずっと普通と書いてきましたが、実は一部非常に個性的な部分があります。
 いや、むしろこの演奏はそっちの方で有名かもしれません。
 その個性的な部分というのは、第2楽章と第3楽章の順番を入れ替えて演奏するという、他に誰もやらないような変更です。
 第2楽章と第3楽章を入れ替えると、スケルツォの後にアダージョが来るという構成になるのですが、この構成自体は、古くはベートーヴェンの交響曲第9番に見られますし、ブルックナー自身も次の第8番以降はその構成にしていますので、突飛というほどではありません。また、第8番を先取りしたと言えなくもないでしょう。
 しかし、そう考える人はいても実際にやる人というのはあまりいないでしょう。コリン・デイヴィスも勇気があるというかなんというか……よくまあ踏み切れたものだと思います。
 イロモノ的扱いを受ける分だけ不利でしょうに……
 実際のところ、楽章を入れ替えたことによる楽章間の調性の繋がりの良し悪しについては、正気言ってよく分かりません。何分、わたしには絶対音感が無いこともあって、もともと調性の繋がりをそれほど気にする性質ではありませんでしたから。
 ただ、バランス的には、オリジナルの構成では長い楽章が前半に固まっているため頭でっかちになって後半が妙に軽い印象を受けるのと較べて、この構成だと長い楽章が分散していて非常にバランスよく聞こえます。
 個人的には、この演奏の構成の方が好みです。(2001/8/23)


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