指揮 | エドゥアルト・ヴァン・ベイヌム |
演奏 | アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 |
カップリング | ブルックナー 交響曲第5番 他 Dutch Maseters Volume57の一部 |
録音 | 1953年5月 |
発売 | PHILIPS(DECCA) |
CD番号 | 9031-73243-2 |
速いテンポなのにセカセカとしていない。 スマートなのに拡がりがある。 この演奏は、ヴァン・ベイヌムの懐の深さを感じさせてくれる演奏です。 ヴァン・ベイヌムの演奏には適度な「粘り」があると思います。 「粘り」が無いと、アッサリし過ぎた印象に残らない演奏になります。 「粘り」があり過ぎると、くどくなり、聞いていてイライラしてくる事があります。 ヴァン・ベイヌムはこの「粘り」の加減が上手く、速めのテンポ(といっても無茶苦茶速い訳ではありませんが(笑))なのにもかかわらず、スケールが大きく、心に残る演奏になっているのです。 特に、テンポは動かさずメロディーを歌い込むことによって「粘り」をつくりだしているため、スマートさからくる風通しの良さと、感情に訴える力が両立しています。 そのため、メロディーの一つ一つに躍動感があり、さわやかな印象を聴き手に与えます。 また、ダイナミクスの微妙な変化と、音の扱いも上手さも、音楽に多彩な表情を付けるのを助けています。 例えば、第2楽章では、テンポ設定自体はかなり速めですが、シンバルが入る頂点へ向けての盛り上がりは、少し盛り上げた後、いったんピアノに落ちる部分の扱いがとても柔らかく、フォルテの部分が録音のせいもあって、迫力満点で無いのに、相対的に大きなスケールの音楽になっています。 この演奏は、LPで発売された当初から名盤として評判が高かったのですが、CDとしては初期の頃一回発売されたきりで、長らく廃盤になっていました。 先年、それがついにポリグラム(ロンドン)より国内盤で復刻されたときは、喜び勇んで買いに行きました。 で、聴いてみたのですが……??? どうも今ひとつです。そんなに評判になるほど良い演奏とは思えませんでした。 当時、同じ頃に発売された1947年録音の演奏の輸入盤の方が、よっぽど良い演奏に聴こえました。 そのため、1953年録音の方は、半分お蔵入り状態になり、1947年録音の演奏の方ばかり聴いていました。 そして昨年(2000年)末、このヴァン・ベイヌムのブルックナー録音集が発売され、その中に、ずっと未CD化だったブルックナー第5番が含まれているので買ってみたのです。 この録音集には1953年録音の第7番も含まれており、CDを作ったのがDECCAからPHILIPSに変っていることもあって、もう一度聴いてみることにしました。 聴いてみると……前に聴いたときと打って変わって、「これだったら名盤になるのも頷ける」というほどの素晴らしい演奏なのです。 レコード会社が変ると音が全く変ってしまうのはよくある話なので、「まあ、そんなものだろう」と納得して、専らこのPHILIPSの方ばかり聴いていました。 今回この感想を書くにあたって、「せっかく2枚あるんだから、どれぐらい違うものかなぁ」と思って聞き比べてみました。 そうすると………実は2枚とも区別がつかないくらい同じ復刻状況だったのです!(いや、当たり前っちゃ、当たり前なのですが(笑)) つまり、わたしは同じ演奏を聴きながら、片方は良い演奏と思い、片方は良くない演奏だと思っていたのです(汗) もちろん、わたしの耳&脳が悪いことが一番の原因なのですが、ちょっとしたことで演奏の評価がまるっきり正反対になっていることに驚きました。 同じ再生装置で聴いているのですから、違うのは、音量とその時の気分(笑)ぐらいでしょう。 つまり、そういった要因で評価は簡単に変ってしまうのです。 まあ、実際には2回目に聴く時に音量とかを変えても、どうしても1回目に聴いたときの第一印象…良かったの、悪かったのだのが残っていますから、ちょっと難しいかもしれませんが…… ……ううーむ…今まで悪い印象を受けた演奏は、もう一度聴き直す必要がありそうですね(2001/2/9) |