A.ブルックナー 交響曲第5番 変ロ長調

指揮フランツ・コンヴィチュニー
演奏ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
録音1961年6月
発売BERLIN Classics(Schallplateen)
CD番号BC 2079-2


このCDを聴いた感想です。


 コンヴィチュニーのブルックナーということで、聴く前は、これはきっとひたすら重く無骨で、小細工なしはもちろんのことついでに小回りも全くきかない演奏だと予想していました。ところが実際に聴いてみると、意外とそうでもないのです。
 例えば、この曲には金管がフォルテでコラールのように動くパターンが多く登場しますが、その響きは個々の楽器の音色がそのまま聞こえ、金管全体が一つの音色ような溶け合った響きではありません。そういう点ではたしかに洗練されたというよりも無骨に近い硬い響きです。ただし、個々の楽器の音色がそのまま聞こえるといっても、各演奏者の音がバラバラに聞こえるのではなく、トランペットパートならトランペットパート、トロンボーンパートならトロンボーンパートといった、パート内では音色は一体にまとまっています。パートとパートは溶け合わず、トランペットならトランペット、トロンボーンならトロンボーンとして聞こえてくるのです。要は楽器により独自の音色として聞こえてくるわけですが、楽器のカラーがハッキリと出ているため、個々の楽器が限界まで吹き切った突き抜けるような音色と力強さはより直接的に伝わってきますし、なにより楽器の数だけ音に太さがあります。
 さらにパートごとに音色は分かれていても、パート同士の音量のバランスはミリ単位の調整をしているじゃないかと思えるぐらい絶妙なバランスです。重心の低い安定性のある響きですが決して重過ぎず、低音よりもむしろホルンやトロンボーンの上の方の中音に近い音の方が強く、それに突き抜けるようなトランペットが上に乗っかっています。このトランペットもかなり硬い音で刺すような刺激的な音ですが、中低音の厚い響きがクッションとなり存在感を保ちながらも全体から変に浮いてしまったりしていません。
 このバランスが最高の形で表れているのが、最後のコラールです。トランペットパート以外の金管がギラギラと輝く力強い音色で上から下まで陰一つ許さないような分厚い響きの和音を演奏しているその一段上に、トランペットが針のような細い、しかしよく突き抜ける音色がしっかと乗っかっているのです。トランペット以外のパートの太い響きに較べたらトランペットパートの音は正反対に細いのですが、その細い音に全ての力を凝縮したかのように力があり、まちがいなくメロディーパートである存在感を発揮しながらも、その細さにより、周りの和音をかき消してしまうことが無く、バランスとしては非常にちょうど良いものになっています。わたしもこの曲の演奏をそれほど多く聴いたことがあるわけではありませんが、ことこのコラールに関しては最上のものの一つでした。
 金管のコラールがコンヴィチュニーのイメージにまだ近かったの比べ、驚いたのがテンポの変化とピアノの部分での歌い込みです。
 テンポ変化については、それこそ小細工小回り一切なしの一定のテンポかと思っていたのですが、意外なほどよく変わります。
 特に第1楽章に顕著に表れていましたが、フォルテの部分は速めのテンポであっさりしていると思えるぐらいテキパキと進んでいきながら、ピアノの部分に入ると急に遅く粘りだします。
 そしてメロディーはじっくりと歌いこむのです。
 このピアノの部分の歌い込みは、一つ一つの音に力が入っていて、濃厚と言ってよいほど表情をつけています。テンポもの微妙に伸び縮みし、小回りがきかないどころか、むしろ神経の行き届いた反応の良さを見せています。
 フォルテ部分の金管がある程度予想通りだったのに比べ、ここまでメロディーを歌い込むというのはちょっと予想外で、この演奏はコンヴィチュニーの知らなかった一面を教えてくれました。(2007/3/24)


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