A.ブルックナー 交響曲第5番 変ロ長調

指揮ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏ウィーン交響楽団
録音1954年10月2日
発売日本フォノグラム(ORFEO)
CD番号PHCF-5211(C 231 901 A)


このCDを聴いた感想です。


 これがフルトヴェングラーを震撼させたあの「カラヤン・チクルス」か。

 1950年代後半以降は、ウィーン・フィルと密接な関係を持つようになったカラヤンですが、1950年辺りからフルトヴェングラーとの確執が激しくなり、フルトヴェングラーが亡くなる1954年までは、フルトヴェングラーによってウィーン・フィルからは完全に閉め出されていました。
 そのウィーン・フィルの代わりにカラヤンが指揮していたのがウィーン響で、このオーケストラを猛練習で鍛え上げて、フルトヴェングラーがウィーン・フィルで演奏したプログラムと全く同じ曲目を翌日にぶつけるというのを繰り返したため、終いにはフルトヴェングラーがノイローゼになりかかった、という半ば伝説めいたエピソードがあり、その頃の一連の演奏が「カラヤン・チクルス」という名前で行なわれています。
 この演奏もその一つなのですが、はたしてフルトヴェングラーの脅威になるような演奏かというと、どうでしょうか? 脅威というにはちょっと完成度が低いような気がします。カラヤンもまだまだ若かったというところでしょうかね。もっとも、この演奏はフルトヴェングラーが亡くなるわずか二ヶ月前ですから、今さら影響がどうのという段階は通り越していそうですが。
 カラヤンの若さが思いっきりに出てしまったのがテンポの変わり目です。
 特に、テンポがだんだん遅くなっていったん音楽が終わり、次にまた新たに速いテンポで音楽が始まる部分で、間の「間」が取りきれず、次の音楽の最初の音が前に突込み気味になっています。そのため、どうしてもセカセカとした焦った印象を受けてしまいます。
 また、オーケストラの方も少々問題があります。
 それに、音の出し方などの表現の統一のされ方は非常に見事なのですが、アンサンブルはかなり粗が目立ちます。
 音の出が揃わなかったり、カラヤンの指揮に上手くついていけなくて後ろに引張り気味になったり逆に先走りそうになったり、となかなかハラハラさせてくれますが、まあこれは、おそらくライブの一発録りなのである程度は仕方ないことでしょう。
 とはいえ、ある部分でメロディーが丸々落っこちてしまったのにはさすがに驚きましたが(笑)
 こういう具合に、いろいろ怪しげな点があったこの演奏ですが、個人的にはなかなか好感を持ちました。
 やはり、カラヤンの懸命に奮闘している姿が垣間見えるからだと思います。
 第4楽章の中盤で、最後に主役となるメロディーが、金管のコラールとして初めて登場する場面があります。
 カラヤンはこのコラールで急にテンポを落として硬く吹かせ、その何小節か後にまた登場する金管のコラールとの間に挟まれた弦のメロディーを壊れ物でも扱うみたいに丁寧に柔らかく演奏させています。
 おそらくコラールで荘厳な雰囲気を、弦楽器で静謐な雰囲気を意図したのでしょうが、実はそれほど上手く行っているわけではありません。バランスや和音やオーケストラの反応が今一つでちょっと中途半端な効果に留まっています。
 しかし、カラヤンの「自分はこういう音楽をやりたいんだ」という意気込みはたしかに伝わってきて、聴いている自分も思わず「そこでそうしたい気持ちは非常によくわかるぞ!」と力強く頷きたくなってしまうほどでした。
 一方、第2楽章のゆったりとしたメロディーなんかは、上手く反映されていて、切れ目の無いレガートでひたすら柔らかく演奏されており、後年のカラヤンの原型が既に表れています。
 第4楽章最後のコラール部分は、なかなか抜けの良い音で迫力があります。ここは金管がウィーン・フィル並にほんの一瞬だけ遅れて音が出てくるあたり、わたしはその一瞬に緊張感があって割と好きなのですが、人によっては反応が悪いとして気になる方もいるのではないかと思います。

 さて、録音ですが、モノラルのライブ録音とはいえ1954年ということもあって音自体はそれほど悪くありません。
 ただ、困った事に、フォルテになると音に急にリミッターがかかってしまいます。せっかくのフォルテなのにだいぶ迫力が失われてしまい、これはまいりました。
 また、たまに大きく雑音が入ったり、音響が乱れてちょっと聴き辛い部分もあり、正直、録音面では不満が残りました。(2004/10/16)


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