A.ブルックナー 交響曲第5番 変ロ長調

指揮ルドルフ・ケンペ
演奏ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
録音1975年5月
カップリングブルックナー 交響曲第4番<ロマンティック>
発売Scribendum
CD番号SC 003


このCDを聴いた感想です。


 音に奥行きを感じさせる演奏です。
 立体感があると言っても良いかもしれません。
 理由の一つに、メロディーがクリアに演奏されているという点があります。
 この曲は「対位法の権化」と称される事もあるぐらい、いくつものメロディーが錯綜して登場するのですが、その一つ一つのメロディーがよく整理され、絡み合うコードを一本ずつ色で塗り分けたように、はっきりと存在感を示しています。
 あまり感情を表に出したような浸るような歌わせ方ではないのですが、力を内側に秘めたような、濃い凝縮された音で、テンポを動かさず直線的でありながら、情感が豊かに伝わってきます。
 しかし、このメロディーがクリアに表れている事以上に、演奏に奥行きを与えているのが響きです。
 まさに音の壁がそこにあります。
 しかもこの壁、目の前に立ち塞がっているのではないのです。
 料理用のボウルの底面に立って見上げたというか、採石場の下から見上げたというか、壁は自分のすぐ前にあるのではなく、自分の近くは平らで、その周りを壁が取り囲んでいるような感じです。
 横の壁は弦楽器です。
 厚くはあるもののそれほど高くは無い壁が立ち、それが迂回して正面に回り込んでいます。
 そして正面には木管の少し低い山があり、その背後、遥か遠くに、金管の壮大な山というか壁が、アルプスのアイガーやヒマラヤのように、絶対に越えられないような高さにそびえ立っているのです。
 近くの弦楽器・木管楽器、遠くの金管楽器、それらが一体となって一つの空間を創り出しているため、非常に奥の深い響きに感じられます。
 さらに、この響きの音色がまた良いのです。
 決して圧倒するような分厚い響きではありません。
 むしろ余計なものを削ぎ落として、透明感を保った響きです。
 細くなると、どうしても高音がキンキンと金属的な平たい音になりがちですが、この演奏では、高音楽器が強く出ているのにもかかわらず、高い響きを抑えて、丸く厚みを持たせ、響きの一体感を保っています。
 低音も無闇に出過ぎるのではなく、一定の重量感は保ちながらも、全体の響きの一部として綺麗に収まっています。
 透明でありながら軽すぎず、一体となることで厚みと力強さも感じられる響きであり、まさに、遠くの白銀の峰のように、澄んでいながらも確かな存在感があります。
 そして、最後に書いておきたいのが、やはり終盤のコラールの部分です。
 金管が全開で吹き鳴らすのですが、重さや厚みは前よりも増してはいません。
 しかし、力強さが全く違います。
 力のある伸びの音がどんどん前に突き進んでいきます。
 透明感は若干損なわれましたが、そんな事が気にならないぐらい、曲の最後に相応しく堂々としたもので、わたしは非常に満足しました。(2004/2/14)


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