A.ブルックナー 交響曲第4番 変ホ長調 <ロマンティック>

指揮ユージン・オーマンディ
演奏フィラデルフィア管弦楽団
録音1965年4月13日
発売SONY
CD番号SB2K87742(0877422000)


このCDを聴いた感想です。


 まさに「常識的」な演奏です。
 聞く者を驚かせるような突飛なことは何一つしていません。
 テンポも速すぎず遅すぎず、初夏の気候のようにほどよいテンポを保っていますし、昔のクセ者の指揮者のようにメロディーの最後で遅くしたり速くしたりといった伸び縮みもありません。
 フォルテでの和音も、フィラデルフィアですから多少華やかですが、十分な重量感のある厚い堂々とした響きです。
 大きく飛び抜けたところが無い代わりに大きな欠点も無い、高値安定といったところでしょう。
 要するに、いわゆる「ソツの無い」演奏です。
 そうなると、これはもう上から見ても下から見てもつまらない演奏、と思いきや、これが意外と面白いのです。いや、聞いて十分に納得できる演奏と言っても良いかもしれません。
「常識的」であっても「単調」ではないのです。
 たしかに、大きな変化はありません。音楽は予想できる一定の枠の中に収まっていて、最初から最後までその枠の中で進んで行き、そこから飛び出すことはありません。つまり破綻の無い予定調和の世界です。
 しかし、その枠の中は決して十年一日、同じ調子で進んではいません。むしろ常に動いています。
 といっても、上記の通りテンポを動かすわけではありません。
 テンポではなく、メロディーや伴奏を強く歌わせて動きを付けています。
 このメロディーや伴奏の歌わせ方も、伸び伸びと歌ってはいますが、節を付けて歌うカンタービレとは少し異なり、どちらかというと硬めで、太く力強く、歌を聞かせるというより、存在を強調するような歌い方です。こういう力のある歌い方がまた曲の雰囲気によく合っています。
 外側に一定の枠があっても、内側では常に変化があり、次々と移り変わっていくため、これはもう全くつまらないと感じることはありません。他の指揮者であるような巨大な圧倒するような響きで押してくる演奏よりもむしろ先へ聞き進む期待感は大きいぐらいです。
 さらに突き詰めると、動きでも印象に残ったのは、フォルテよりも弱いピアノの部分です。
 音量は小さく、あくまでも弱いのですが、その中でしっかりと歌っています。
 第2楽章なんてほとんど全編それのオンパレードで、小さくても集中力の高いメロディーに加え、伴奏もメロディーよりは一歩控えた立場ながら確実な存在感があります。
 このメロディーと伴奏の組み合わせは、それほど感情を込めて歌い込んでいるようには聞こえないのに、全体としては深く情緒を感じます。
 感情的に歌うことでメロディーに表情を付けるのではなく、楽譜の持っている情緒をうまく引き出しているのだと思います。
 曲の最初から最後まで常識の範囲内に収まっていながら飽きさせない、さらには大きく頷ける演奏でした。(2006/9/9)


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