A.ブルックナー 交響曲第4番 変ホ長調 <ロマンティック>

ノヴァーク第1稿(1874年版)

指揮ヘスス・ロペス=コボス
演奏シンシナティ交響楽団
録音1990年2月10・11日
発売TELARC
CD番号CD-80244


このCDを聴いた感想です。


 前回のD.R.デイヴィス盤と同じく、またもノヴァーク版第1稿(1874年版)による演奏です。D.R.デイヴィスの録音が2003年ですから、こちらの方が10年以上も前の録音というわけですが。
 まあ、版についてはともかく、『スペインの指揮者とアメリカのオーケストラでブルックナー!?』と思われるかもしれません。実際、わたしも第1稿だから買ったようなもので、演奏についてはそれほど期待していませんでした。しかし、これが聴いてびっくり、意外と言っては失礼ですが実に良かったのです。
 なにより、この演奏で特筆したいのは響きの美しさです。
 濁りの無いクリアな音なのはもちろん、それが細く小さくまとまっているのではなく、しっかりとした厚みある響きがあり、オーケストラを中心に丸く広がっています。広がっているといってもバラバラに拡散しているという感じでもなく、輪郭のハッキリとした均一な響きで、その中は詰まっているですがぎゅうぎゅうと暑苦しくはなく、バランスの取れた美しい響きなのです。決して重くどっしりとした響きではありませんが、その身軽さがむしろよく抜けた程よい軽さと曇りの無い透明感を生み出しています。
 さらに、一つ一つの音が優しく、音の頭だけ目立って聞こえたりしないようにアクセントもあまり硬くせず重みをつけて踏みしめるようなアクセントにしたりと、響きの美しさが損なわれないよう注意が払われています。
 特に、この演奏で採用されている第1稿は、通常使われている稿ではユニゾンのメロディーが3度などの和音の移り変わりになっているものも多く、ユニゾンでは太いしっかりとした『音』が求められるのに対して、和音の移り変わりの場合は、どれか一つの音があまり突出しないで全体が厚く響き、その固まりが音の移り変わりに合わせて順繰りに姿を変えていくような『響き』が求められます。そういう意味でも、この演奏が他の稿ではなく第1稿を使っているのは良い選択でしょう。
 演奏しているシンシナティ交響楽団は1986年からロペス=コボスが芸術監督を務めてから一気にレベルアップしたとの評判ですが、その噂に違わぬなかなか実力のあるオーケストラのようです。
 他のアメリカのオーケストラにもだいたい共通して言えることですが、奏者各人の実力が高く、細かい動きまで正確に弾いているため、響きや動きが非常に明確です。
 特に、金管楽器は、柔らかく吹きながらも決してフニャフニャと骨の抜けたような音ではないしっかりとした芯のある音ですし、柔らかい音だけでなく第3楽章ではアタックの効いた硬い音を綺麗に決めるなど、上手さが光っていました。
 ただ、一部、気になったのがオーケストラ全体でのリズムです。
 第1稿では第4楽章に5連符が頻繁に登場し、それが最後まで続きます。この演奏は、初めの方はちゃんと一小節を均等に五つに割っていたのに、最後では、ほとんど四分音符二つと二拍三連符、つまり2+3の形になっているのです。もしかしたらロペス=コボスの指示によるものなのかもしれませんが、わたしには慣れから自然に2+3になってしまったように聞こえ、他が良かっただけに惜しいなと思いました。(2005/5/7)


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