A.ブルックナー 交響曲第4番 変ホ長調 <ロマンティック>

ノヴァーク第1稿(1874年版)

指揮デニス・ラッセル・デイヴィス
演奏リンツ・ブルックナー管弦楽団
録音2003年9月16日
発売BMG(ARTE NOVA)
CD番号82876 60488 2


このCDを聴いた感想です。


 ブルックナーの交響曲というと付き物なのが『版』の話です。
 一つの曲に対して三つも四つも版があったり、あげくのはてには校訂者や出版社による違いまでありますが、多くの場合は細かい違いで、それほど聴き慣れていない人なら「そういえばどこか違ったっけ?」と気づかないことも少なくありません。
 しかし、中には例外があります。
 この第4番の第1稿は、第3番の第1稿と並んで、聴いてすぐに『これは全然違うぞ』とわかるぐらい一般的な演奏と違いの大きい版です。
 なにせ、聴き慣れた曲の中に一部まるで聴いたことも無い部分が出てくるというよりも、そもそも聴いた事がない曲の一部にところどころ第4番が紛れ込んでいると言った方が近いのではないかと思えるほどです。
 それでもまだ第1楽章は聴き慣れている第4番の雰囲気がだいぶ感じられ、よく知っているメロディーがユニゾンではなく和音で動いているな、とか、演奏している楽器が全然違うものに変わっているな、ぐらいで済んでいたのですが(もちろん、その間には聴いたことも無いような音楽がいろいろ登場するわけですが)、第2楽章になると、雰囲気こそなんとなく近いような気がするものの、伴奏などだいぶ変わっていて、かなり違和感を感じます。
 第3楽章は、もう完全に別の曲です。
 拍子からして後の楽譜の2拍子ではなく、他の交響曲と同じ3拍子で(一般的な演奏の第4番のスケルツォだけ珍しく2拍子)、トリオも全然違うものです。
 なんでも、ブルックナーは第3楽章だけ後から完全に書き直して現在の2拍子のスケルツォにしたそうで、個人的にも、この第1稿の3拍子のものより、後の2拍子の方が垢抜けていて好きですね。
 で、第4楽章なんですが、冒頭こそ全く違いますが、それでも第1楽章並に一般的な演奏と共通した部分が多くあり、メロディーなんかも、聴き慣れた形がよく出てきます。
 ただ、大きく違うのは、メロディーや伴奏によく出てくるリズムです。
 一般的に聴き慣れた方では、4分音符二つ+2拍3連符といういわゆるブルックナーリズムや、タンタラタッタという4分、8分8分、4分、4分(単位:音符)というリズムがよく登場しますが、第1稿のほうでは、この五つの音によるリズムのほとんどが5連符になっているのです。
 この第1稿の演奏を聞いて、良くも悪くもとにかく印象に残ったのがこの5連符で、なまじメロディーライン自体はよく聴き慣れたものと同じであるだけに、ひどく妙なのです。
 しかも5連符という動きは演奏する方も辛いようで、この演奏はそれほど変ではありませんが、演奏によってはかなりぎこちなくなってしまっているものまであります。これは当時からそうだったようで、初演だったかを担当したウィーン・フィル(だったかな?)から、こんなものはとても演奏できない、とクレームがつき、ブルックナーが今の形に改めたのだそうです。
 全体的に第1稿は、現在の形に較べ、あまり上手く整理されておらず野暮ったい印象を受けます。メロディーにしても、スッキリと一本にまとまっておらず、和音で動いたりとゴチャゴチャしていますし、音楽のつなぎも、ただでさえ急に変わるといわれているブルックナーの中でもそれに輪をかけて唐突です。
 ただ、スッキリとしていないのはいないなりの良さもあり、和音を伴って動くメロディーなどは、一般的な演奏にはない厚い響きがあって、なかなか魅力です。

 デニス・ラッセル・デイヴィスの演奏は、小さいながらきれいに整えられています。
 メロディーがユニゾンではなく和音なのを生かして、力強さよりも美しく厚い響きを前面に押し出しています。
 基本的に変わった解釈の無いオーソドックスな演奏なので、普通に鑑賞するのはもちろんのこと、第1稿を知るための演奏としてもなかなか適当ではないかと思います。(2005/3/26)


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