A.ブルックナー 交響曲第3番 ニ短調

指揮クラウス・テンシュテット
演奏バイエルン放送交響楽団
録音1976年11月4日
発売Profil(hänssler)
CD番号PH04093


このCDを聴いた感想です。


 テンシュテットといえばやはりロンドン・フィルというイメージがあります。それがバイエルン放送響を指揮したというのはちょっと珍しいのではないでしょうか。
 しかも最も評価の高いマーラーではなくブルックナー。わたしはテンシュテットのレパートリーをよく知りませんが、なんだかこれもテンシュテットのイメージではありませんでした(いや、もちろん実際には普通にレパートリーに入っていたと思いますが)。
 そういうテンシュテットにしてはちょっと珍しい演奏ですが、わたしがテンシュテットの演奏をあまり聴いたことがないということもあり、テンシュテットというよりもバイエルン放送響の威力を強く印象付けられました。
 とにかく、いくらフォルテで強く演奏しても音がほとんど荒れないのです。
 これが、もしハーモニーを重視してフォルテでも抑え目にしているのであれば、荒れていなくても納得できるのですが、聴いている限りでは、結構目一杯力を入れています。弦楽器はスピード感がありますし、金管楽器などは、ビリビリと割れる寸前まで吹き切っています。個々の楽器の音だけ注目して聴けば、勢いと迫力を重視した荒っぽい演奏の音のようなのに、勢いと迫力はありながら荒れたところがありません。これはハーモニーに濁りが無いことも要因の一つです。このハーモニーについては、特に一体感に目を見張らされました。まず音色。個々の楽器が強く自己主張したりせず、一つのハーモニーを作るためにお互いに溶け合わせています。なにより音量のバランスがよく、大きな一体として調和しています。
 ただ、あまりに個々の存在が薄くなりすぎて、ハーモニーの一部にメロディーが入っていても浮かび上がってこないという面もあります。第4楽章の前半にトロンボーンとホルンがハーモニーを作って弱いピアノでコラールのように進んでいく部分がありますが、このハーモニーの一部であるトロンボーンが、一部で対旋律っぽい面白い動きをしています。しかし、完全にハーモニーに埋もれてしまい全く聞こえないのです。少しぐらい強くしてもバランスとしてはそれほど変ではないでしょうし、ここはもうちょっと強調して欲しかったところです。
 まあ、もともとトロンボーンはかなり抑え目になっています。テンシュテットの指示か録音によるものかはわかりませんが、トロンボーンよりもホルンやトランペットの方が強めで、ハーモニーなどではほとんどホルンやトランペットの陰に隠れています。直接の音よりもホルンやトランペットを後光のように取り巻く響きのように聞こえてきます。
 それを含め、響きは全体を通して厚みがあります。いや、奥行きといった方が良いかもしれません。
 実際、高い方と低い方という上下の厚みはそれほど感じられません。その代わりに奥へ伸びていきます。
 深いというべきでしょうか。どこかの京都の商店ではないですが、間口はそれほどでもなくても、入ってみるとその奥の長さに驚かされるみたいに、前後に厚みがあるのです。
 そのため、低音を強調しているわけでもなく、表面上はバランスよく整えただけのようでありながら、重厚に響いています。
 一方、テンシュテットの特徴として気が付いたのはテンポ設定です。わりと速めのようで、第4楽章なんか、ほぼ11分弱で演奏しています。
 これは、ヨッフムの新旧両盤と同程度で、他の演奏が12〜13分ぐらいかかっているのに較べると、かなり速い方でしょう。
 ただ、テンポが速いからといってあっさり流しているのではありません。表現の幅が大きいわけではないのですが、あまり派手にならないよう軽く歌わせています。これがなかなか自然体で速いテンポとよく合っています。(2005/6/4)


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