A.ブルックナー 交響曲第2番 ハ短調

指揮オイゲン・ヨッフム
演奏バイエルン放送交響楽団
録音1966年12月
発売Grammophon
CD番号429 079-2


このCDを聴いた感想です。


 ヨッフムのブルックナーの録音は、ライブ録音や単発の録音は別にしても、全集というまとまった形で2回録音を行なっています。
 その二つの全集は、どちらもスタジオ録音なのですが、時期的には、古い方がほぼ60年代で、新しい方が70年代と、だいたい10年くらい間隔があります。
 またオーケストラの方も、古い方が、バイエルン放送響とベルリン・フィルの二つのオーケストラを曲によって振り分けているのに対して、新しい方は全てドレスデン国立歌劇場管(ドレスデン国立管)を指揮しています。
 わたしの聴いた印象としては、古い方の全集は、若いだけあってか、スッキリとしていてより機能的、いわば都会的なのに対して、新しい方の全集は、無骨で少し濁り気味なのですが、その一方で優しく情緒があり、田舎的な雰囲気を感じました。
 また、新しい全集の方は平均的にレベルが高く当り外れが無いのに対して、古い方は、曲による出来のばらつきが若干あるように思いました。……といっても、これも高いレベルの話で、外れとした演奏でも、十分に鑑賞に価する演奏です。

 今回取り上げた演奏は、古い方の全集の中からの一曲なのですが、わたしがこの全集を聴いた中では、取り上げた第2番は、第9番(こちらはベルリン・フィルとの録音)と並んで、最も気に入った演奏です。
 まず、機能性という面では、文句がありません。
 響きは引き締まって緊張感がありながら、ギチギチに締め過ぎる事も無く、ちゃんと余裕が感じられます。
 音程とかアンサンブルといった技術面も、曖昧にごまかしたりせず全て明快で、不安定さを全く感じさせず、安心して気持ち良く聴いていられます。
 演奏しているバイエルン放送響は、ヨッフム自身が育てたようなもので、録音当時は既に第2代のクーベリックに常任指揮者の地位は譲っていたとはいえ、おそらく最も信頼していたオーケストラではないかと思います。
 実は、この演奏を聴くまでは、60〜70年代ぐらいまでのバイエルン放送響は、それまでに聴いてきた演奏が良くなかったのか、技術的には今一つという印象を持っていました。
 しかし、この演奏を聴いてからは、60年代から既に高い技術があったことがよくわかり、慌てて認識を改めました。
 とまあ、認識を改めた点はさておき、機能性については全集の中の他の曲も高く、第2番だけが突出しているのではありません。
 では、第2番の演奏と他の曲のどこに差があるかといいますと、それは情緒です。
 第2番の演奏には、後の二回目の全集を先取りしたかのような、豊かな感情が感じられます。
 他の演奏が、機能的には優れていても、なんだか機械的でやや表情に乏しく、少しばかり単調に感じたりする事もあるのに、この演奏は躍動感があり、若々しい活力に溢れています。
 これは曲調もあるのかもしれませんが、常に明るく、しかもギラギラした欲望のような不純な輝きではない、素直で優しい明るさを感じました。
 その一方で、ブルックナーの演奏によく求められているような、圧倒的な迫力や、祈りのような荘厳な響きからは、表情が豊かな分、遠ざかったと感じる方もいらっしゃるかと思います。
 たしかに、迫力や荘厳な響きもブルックナーの魅力なのですが、わたしは、この演奏のように、機能的に優れていながら、明るく表情豊かで人間的な演奏も強く魅力を感じます。(2003/10/4)


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